研究課題/領域番号 |
23580379
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
坂上 清一 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター研究支援センター, 業務第2科長 (10414757)
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キーワード | 牧草量 / 分光放射 / 地理統計 / kriging法 / 不均質性 / 動態モデル |
研究概要 |
1)牧草量分布のモニタリング 試験圃場内に40m×40mの定置方形区を3点設定し、各定置方形区内を調査用格子サイズ4m×4mに区切り、格子の頂点(1方形区あたり121頂点)における分光放射率を携帯型分光放射計で測定した。牧草量分布の時間的消長も追跡するため、約6ヶ月の放牧期間中約4週間毎に同地点の測定を繰り返した(試験中8回計測)。分光放射率から牧草量を推定するとともにkriging法によって牧草量分布を推定し、次いで、マッピングに関する地理統計学的モデルにより、放牧地における牧草量分布の特徴を解析する予定である。 2)一次生産力の測定 牧草量観測用の定置方形区に隣接する場所に一次生産力測定用の試験区を設置した。この試験区内に複数の禁牧ラインを設定し、ライン内に生育する牧草の放牧牛による採食を短期間排除するため、ラインを電牧線で囲い禁牧状態とした。禁牧ラインは、牧草量のモニタリング測定日ごとに設置しなおした。ライン設置直後に内部を1m間隔ごとに携帯型分光放射計およびライジングプレートメーターで測定し、広範な牧草量データを求めておいた。禁牧ラインはそのままで約2週間後に再度同様の測定を行い、その差分から各牧草量ごとの生産力を推定できた。 3)牧草量動態モデルの改良 牧草量の時空間解析のために適用を予定している拡張型logistic方程式(Sakanoue, 2007; 2009)の特性を検討した。本モデルが個体群動態モデルにおけるkinetics方程式にも変換可能であることを明かにし、logistic方程式とkinetics方程式を統合した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
牧草量分布の時空間分布に関しては、放牧試験を実施することで実地調査データを取得しているものの、実際のマッピングおよび地理統計学的解析は未実施である(やや遅れ)。 一次生産力推定に関しては、分光放射およびライジングプレートメータ法を適用し放牧草地において測定を行った。季節ごと牧草量ごとに、対応する一次生産力を取得できたので、時空間分布モデルを検証するためのデータとして期待できる。また、従来の収穫法よりも簡便、広範囲に生産力を把握できる(順調に進展)。 次年度以降に研究予定であった動態モデルの適用と改良に関して、拡張型ロジスティックモデル(Sakanoue, 2007; 2009)の特性を検討したところ、そのモデルがkinetics方程式へも変換可能であることが明らかになった(計画以上)。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度同様に放牧試験を実施する。試験圃場内に40m×40mの定置方形区を3区設定し、調査用格子サイズ(4m×4m)に区切り、格子の頂点における分光放射率を放射計で測定する。 牧草量分布の時間的消長を追跡するため、調査間隔は放牧期間中約4週間を予定している。得られた牧草量データから、kriging法によってその分布状態を推定する。次いで、マッピングに関する地理統計学的モデルにより、放牧地における牧草量分布の特徴を解析する。 定置方形区内における牧草量分布データそれぞれに対応する一次生産力データから、kriging法によって一次生産力の分布図を作成する。マッピングに関する地理統計学的モデルにより、その分布の特徴を解析する。 また、拡張型ロジスティック成長モデルを適用・改良し、牧草量の時空間変動のための動態モデルを構築するとともに変動の特徴解析と短期的予測をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり使用する。なお、次年度使用額887,528円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。 禁牧区を設置するため、携帯型の電気牧柵の修繕が必要である。また、標準的な放牧地の施肥管理のために土壌改良資材と化成肥料を必要とする。 約6ヶ月間の放牧期間中、約4週間毎の定点観測や分光放射計のキャリブレーションのためのサンプリングに労力を要し、引き続き、大量のデータ整理もおこなわなければならない。したがって、現場での調査準備と調査補助、屋内での草分け・秤量・分析用試料調整、およびデータ処理等のために補助員を雇用する。 草質推定に関する放射計のキャリブレーションを確実なものとするため、次年度もサンプリングした牧草の化学分析を外注するための費用を要する。 研究成果の公表のため、関係学会への参加に要する旅費、学術論文の英文校閲費、投稿料および別刷代を必要とする。
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