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2011 年度 実施状況報告書

単離筋線維を対象とした極微量分析による食肉の旨味形成機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23580380
研究機関独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

千国 幸一  独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所畜産研究支援センター, 専門員 (40355061)

研究分担者 室谷 進  独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所畜産物研究領域, 上席研究員 (50355062)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードイノシン酸 / 旨味 / 食肉
研究概要

イノシン酸は食肉の主要な旨味成分として知られており、その存在量を制御することは食肉の味を制御することにつながると考えられる。本研究では食肉を構成する筋線維の型がイノシン酸含量に影響を与えているか、単離した筋線維を分析することで明らかにする。今年度は筋線維の集合体である筋肉のタイプによってイノシン酸量に違いがあるかを検討した。また、イノシン酸の生成に関与すると考えられるグリコーゲンと乳酸についても分析を行った。分析には28ヶ月齢の黒毛和種4頭の咬筋、半棘筋、胸最長筋、半腱様筋を採取し、イノシン酸を含む核酸関連物質、グリコーゲン、乳酸の分析を行った。核酸関連物質は5%過塩素酸溶液で抽出し、HPLCにて定量を行った。イノシン酸濃度(micro-mole/g meat)はと畜後8日目で咬筋0.13、半棘筋0.69、胸最長筋2.76、半腱様筋3.08と筋肉の種類によって違いがあり、速筋型筋肉である胸最長筋と半腱様筋では遅筋型筋線維の多い他の2筋肉よりも有意に高い含量であった。と畜後14日目の試料では全体的に含量が減少するものの、咬筋0.16、半棘筋0.14、胸最長筋1.51、半腱様筋1.72と8日目の試料と同様の傾向であった。以上の結果は筋線維型構成が異なる速筋と遅筋で明らかにイノシン酸含量が異なることを示しており、筋線維型の違いがその主因であることを示唆していた。また、イノシン酸含量の経時的な変化を見ると、遅筋型筋肉である咬筋は他の筋肉と比べてイノシン酸の減少が速く、ヒポキサンチンへの分解が促進されていた。その原因としては筋線維型の違いによるATP分解速度の違い、および最終pHの違いが考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

HPLCを用いたイノシン酸の定量方法を確立すること、およびタイプの異なる筋肉組織におけるイノシン酸含量の違いを明らかにすることを目的に今年度の試験を実施した。この部分は申請書の計画で24年度以降に実施する予定であったが、試験計画実施の開始時期の都合上、分析用試料を確保してあった本試験を前倒しで実施した。その結果、HPLC分析に至る筋肉組織の前処理方法やHPLCのカラム等の分析に必要な基本的条件を決定し、今後の単離筋線維分析に向けた準備ができたものと考えられる。また、その結果から、筋線維型構成の異なる速筋と遅筋でイノシン酸含量が異なることが明らかとなり、本研究を実施する上の基本的な仮説であった「筋線維型の相違によってイノシン酸含量が違う」を指示するデータが得られたことは研究の方向性が正しいことを示していると考えられる。さらに、メタボローム解析を行い、イノシン酸だけではない筋肉のタイプの違いによる低分子成分の違いを総合的に捉えることができた。一方、23年度に実施する予定であったミオシン重鎖アイソフォーム特異的抗体の作成は遅れているため、24年度にも実施する予定である。

今後の研究の推進方策

24年度は筋線維の単離方法の確立とミオシン重鎖アイソフォーム特異的抗体の作成を行う。筋線維の単離過程ではイノシン酸などの核酸関連物質の含量を変化させないことが重要であり、そのため筋線維を単離する前に分解酵素を効率的に不活性化する方法を考案する。また、単離後にミオシン重鎖のタイプ判定を行うこと、HPLC分析を行うことを考慮し、タイプ判定とHPLC分析とも両立できる前処理方法とするようにする。 ミオシン重鎖アイソフォーム特異的抗体の作成は、速筋型アイソフォームである2a型アイソフォームおよび別の速筋型アイソフォームである2x型アイソフォームに対する特異的な抗体を作成する。これらのアイソフォームはアミノ酸配列が非常に類似しているためタンパク質を抗原とすることでは作成が困難である。そのためデータベース上で両アイソフォームのアミノ酸配列を比較し、配列の異なる場所のペプチドを選定して抗原とすることで抗体の作成を試みる。

次年度の研究費の使用計画

23年度に実施する予定であった抗体の作成を24年度実施としたため、約60万円の繰り越しが生じている。この全額に24年度予算から20万円を追加し、数種類の抗原化ペプチドの作成とモノクロナール抗体の作成に用いる。その他の研究費はHPLCカラムや筋線維単離用の試薬の購入に用いる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ウシの筋肉部位によるイノシン酸含量の違い2012

    • 著者名/発表者名
      千国幸一、佐々木啓介、柴田昌宏、松本和典、大江美香、室谷進
    • 学会等名
      日本畜産学会第115回大会
    • 発表場所
      名古屋大学東山キャンパス(愛知県)
    • 年月日
      2012年3月28日

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公開日: 2013-07-10  

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