研究課題/領域番号 |
23580381
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
新宮 博行 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所家畜生理栄養研究領域, 主任研究員 (40355219)
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キーワード | 生理学 / ストレス / アミノ酸 / 反芻動物 / 抗酸化物質 |
研究概要 |
本研究課題は機能性飼料給与による家畜飼養管理技術の開発に向け実施する。平成24年度ではルーメンバイパス加糖トリプトファン(Trp)飼料の作出に向けた前段階の試験として、Trpとグルコースをルーメンバイパス処理化したルーメン保護Trp飼料(RP-T)とグルコース飼料(RP-G)を新規作出し、これらを子牛に連続給与することにより、血中代謝産物およびホルモンの動態と家畜の成長量に及ぼす影響について検討を行った。当該試験では4ヵ月齢の乳用種去勢牛を3つの処理区、①賦形材(placebo)区(3.5 g/kgBW)(n = 4)、②RP-T区(placebo(2.0 g/kgBW)+RP-T(1.5 g/kgBW;Trp 20%含有))(n = 4)、③RP-TG区(RP-T(1.5 g/kgBW)+RP-G(2.0 g/kgBW;グルコース20%含有))(n = 4)に無作為配置した。試験開始初日と1ヶ月後の試験日において、飼料給与直前から給与後12時間まで経時的採血を行った。この採血期間のホルモンの分泌変化量はnet AUCを指標に用いて各処理区間で比較した。また、体重測定および体長、体高、胸囲等の体尺計測も定期的に実施した。 当該試験成績を精査した結果、いずれの試験期でもセロトニン、グルコース、インスリンの各血中濃度は処理区間で有意な差を認めなかった。しかし、血中Trp濃度、メラトニン、成長ホルモンの分泌量は、RP-TとRP-Gの併用給与時の方が賦形材給与時に比べ有意に増加し、RP-Tの単独給与時より増加する傾向を示した。また、体重、体長、体高の増加量は賦形材給与時、RP-Tの単独給与時より大きくなる傾向を示した。以上の結果から、乳用種去勢牛に対するRP-TとRP-Gの併用給与は、RP-Tの単独給与時のメラトニンと成長ホルモンの分泌を増加させる可能性を有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に実施した乳用種去勢牛に対するルーメンバイパストリプトファンとルーメンバイパスグルコースの併用給与は、ルーメンバイパストリプトファン給与時より子牛のメラトニンおよび成長ホルモンの分泌を亢進させる可能性があり、また、当該飼料給与後の子牛の成長量にも大きな影響を与えることが判明した。トリプトファンとグルコースの混合物をルーメンバイパス処理化するルーメンバイパス加糖トリプトファン飼料の作出については、その前段階にある当該試験および次年度データに基づき行う予定であるため、この点についてはやや遅れている。しかし、当該試験で用いた2種類の代替飼料(新規作出)はルーメンバイパス加糖トリプトファン飼料と同等の成分とその給与効果を有すると想定されることから、全体的には当該研究課題はほぼ計画どおりに進捗していると考えられ、これに伴う成果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度実施研究課題とその関連成果から、Trpの静脈内連続投与は、セロトニン、メラトニンの血中濃度を上昇させること、隔離単房移動(急性ストレス負荷)時でもコルチゾール(ストレス負荷により分泌量が増加するホルモン)の血中濃度の上昇を抑制させることを明らかにし、また、平成24年度実施研究課題の成果から、ルーメンバイパストリプトファンの給与効果(成長や抗酸化に関連する内因性ホルモンの分泌亢進)は糖添加によりさらに増大する可能性にあることを明らかにした。しかし、急性ストレスを負荷させた供試牛のコルチゾール分泌に対するルーメンバイパス加糖トリプトファンの給与効果、または、ルーメンバイパストリプトファンとルーメンバイパスグルコースの併用給与効果については依然不明な点が多い。 そこで、平成25年度では、急性ストレス負荷供試牛に対する当該飼料給与試験を実施することにより、家畜への糖とトリプトファンの経口給与が家畜のストレス反応に及ぼす影響を明らかにし、これら成果に基づいた家畜の生産効率と家畜自身の快適性の向上を両立させる新たな家畜の生理栄養学的飼養管理技術の開発を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり使用する。なお、次年度使用額45,974円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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