研究課題/領域番号 |
23580381
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
新宮 博行 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所家畜生理栄養研究領域, 主任研究員 (40355219)
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キーワード | 生理学 / ストレス / アミノ酸 / 反芻動物 / 抗酸化物質 |
研究概要 |
本研究課題はセロトニン及びメラトニンの前駆物質であるトリプトファン(Trp)と糖を給与することにより、ストレスに対する適応性の改善効果、並びに、健全な発育に必須であるホルモン(メラトニン、成長ホルモン等)の分泌機能の向上効果を期待する家畜飼養管理技術の開発に向け実施する。平成25年度では、第一胃内で極力分解を受けないよう加工処理したTrp飼料(ルーメンバイパスTrp飼料:RP-T)を育成牛に給与することにより、隔離(ストレッサーの一種)後の内分泌機能の変化について検討を行った。 当該試験では、供試牛として常時群飼下にある4ヵ月齢乳用種育成牛6頭を用い、賦形材(placebo:1.0 g/kgBW)又はRP-T(1.0 g/kgBW)を給餌開始時刻(18時)に給与した。供試牛は4試験区(①隔離無・placebo区;②隔離無・RP-T区;③隔離有・placebo区;④隔離有・RP-T区)に無作為に反復配置し、隔離有区に属した供試牛は19時に未経験の独房に強制隔離させた。血漿中のホルモン変動量は血漿濃度と基礎値で囲まれる面積(反応曲線下面積)を指標に評価した。 当該試験成績を精査した結果、隔離後1時間の供試牛の延べ鳴き回数は隔離無しの2試験区でともに0回であったが、隔離有りのplacebo区で18回、RP-T区で17回を計測した。血漿メラトニン濃度は隔離による影響を受けなかったが、RP-Tの給与は隔離下においても同濃度を顕著に上昇させた。一方、隔離後の血漿コルチゾール濃度は隔離無しの2区に比べ大きく上昇するが、RP-Tの給与は隔離に誘起されたコルチゾール濃度の上昇を大きく抑制した。コルチゾールの反応曲線下面積も血漿濃度の結果と同様であった。以上の結果から、RP-Tの隔離前給与はその後の隔離により受けるストレスへの適応性を改善する可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ストレスに対するTrpの給与効果を検討するために、平成25年度ではストレス環境下(強制隔離)においた家畜に対するRP-Tの給与試験を実施した。その結果、家畜へのRP-Tの隔離前給与は隔離後のストレスへの適応性を改善する効果を有することが判明した。 RP-T飼料及びルーメンバイパスグルコース飼料又はルーメンバイパス加糖Trp飼料を用いた長期給与試験の進捗については供試頭数の不足からやや遅れてはいるが、引き続き26年度にも継続していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究計画について、当初立案計画した長期給与試験の期間を3ヵ月から1ヵ月に短縮しても成長に及ぼす給与効果の発現は把握できること、成長度に関連する他の報告においても試験期間は1ヵ月が主流であることから、当該研究を効率良く円滑に進捗させるために当該飼料の給与期間を1ヵ月に変更して試験研究を遂行することとする。 平成23~25年度実施研究課題の成果から、成長に寄与する成長ホルモンや抗酸化機能、生体リズム調節機能を有するメラトニン等の内分泌機能の向上効果、並びに、付与されたストレスに対する適応性の改善効果など、RP-Tの給与は家畜飼養の生産において大きな有益なプラス効果を有していることが明らかとなった。これら研究成果に基づき、糖添加も考慮した家畜の生産効率と家畜自身の快適性の向上を両立させる、アミノ酸を用いた新たな家畜の生理栄養学的飼養管理技術の開発を目指す研究を推進していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度実施研究課題の遂行にあたり、サンプルの採取時期の遅延とこれに伴う分析の遅延が生じたため。 採取したサンプルの分析用キットの購入費に割り当てる。
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