研究課題
本研究は、子宮内膜炎罹患牛の感染細菌から放出されるリポポリサッカライド(LPS)の卵巣機能への影響を解析するため、卵胞構成細胞である顆粒層細胞および卵胞膜細胞のステロイド産生能におけるLPSの影響を解析した。本年度においては、食肉処理場で採取した子宮内膜炎牛の卵巣および子宮を用いて、卵胞内LPS濃度およびステロイドホルモン濃度を測定したところ、高濃度のLPSを含有していた卵胞ではステロイドホルモン濃度が低下していた。さらに、顆粒層細胞におけるステロイドホルモン合成酵素の遺伝子発現も低下していた。この結果は、LPSが直接的に卵胞の機能に影響していることを示している。次に、大卵胞および小卵胞からそれぞれ卵胞膜細胞を採取してステロイド合成能に対するLPSの影響をみたところ、プロジェステロン産生およびアンドロステンジオン産生は対照区に比べ、LPS処理区で有意に減少した。また、これらのホルモンの合成に関与するStARおよびCYP17遺伝子発現は、対照区に比べLPS処理区で有意に減少した。さらに、卵胞膜細胞の増殖能に対するLPSの影響をみてみたところ、LPSによる効果は認められなかった。これらの結果から、卵胞膜細胞におけるLPSの効果として、1)プロジェステロンおよびアンドロステンジオン産生を抑制すること、2)関連酵素群の遺伝子発現も抑制することが明らかとなった。以上のことから、子宮内膜炎の牛では、LPSが卵胞内に到達し、卵胞構成細胞である卵胞膜細胞の機能を阻害している可能性が示されたと同時に、LPSは直接卵胞機能に影響していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究計画に沿って研究が進められていると考えられる。
卵胞構成細胞である顆粒層細胞および卵胞膜細胞が、排卵後に分化する黄体細胞形成過程におけるLPSの影響を順次解析するとともに、顆粒層細胞および卵胞膜細胞におけるLPSに対する特異的遺伝子の解析を進めていく。
該当なし
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