研究課題
子宮内膜炎を引き起こす感染細菌から放出されるリポポリサッカライド(LPS)が卵巣機能に対して,どのような作用を有するのかを解析するため、雌動物の性周期中に形成される卵胞構成細胞である顆粒層細胞および卵胞膜細胞の黄体化におけるステロイド産生能に対するLPSの影響を検証した。これまでに本研究室で作出検討してきた排卵前の大卵胞から分離・採取した顆粒層細胞および卵胞膜細胞を用いた体外培養系の黄体化への分化誘導システムを用いて,継続的にLPSの影響を解析した。大卵胞から採取した顆粒層細胞を黄体化誘導培地で黄体化を誘導し,黄体化に伴って活発に分泌されるプロジェステロン濃度を経時的に測定した。LPSの処理は,黄体化誘導前,黄体化時期および黄体化誘導前から黄体化時期の3つのフェーズを設け,各フェーズのプロジェステロン濃度を調べたところ,いずれのフェーズにおいてLPSの影響は認められなかった。同様の実験を卵胞膜細胞にも行ったところ,黄体化誘導前から黄体化時期にかけての長期間のLPS処理が,プロジェステロン濃度を低下させることが明らかとなった。さらに,プロジェステロン産生に関与する酵素であるStARおよび3β-HSDの遺伝子発現およびタンパク質発現を解析したところ,LPSはこれら両因子の遺伝子発現には影響しないが,タンパク質発現を抑制することが明らかとなった。これらの結果から,LPSは顆粒層細胞の黄体化には影響しないが,卵胞膜細胞の黄体化を障害すること,さらにプロジェステロン産生関連因子のタンパク質発現を阻害することが明らかとなった。以上のことから,LPSは卵胞発育のみならず,卵胞膜細胞の黄体化を阻害することにより,卵巣機能の障害を引き起こしている可能性を示唆しており,このことが妊娠黄体あるいは性周期中黄体の不形成を誘導しているのかもしれないことが示唆された。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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