研究課題/領域番号 |
23580386
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
杉山 稔恵 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10272858)
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研究分担者 |
山田 宜永 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40253207)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ビタミンD代謝 / ニワトリ / 遺伝子 / 1α水酸化酵素 |
研究概要 |
平成23年度では、以下の研究成果が得られた。1.腎臓の1α水酸化酵素遺伝子(cDNA)のクローニング 1α水酸化酵素を発現し、活性型ビタミンDを産生していると推測される腎臓より全RNAを抽出し、RACE法により鶏1α水酸化酵素遺伝子の配列を明らかにした。この遺伝子は、2275bpの遺伝子からなり、537残基のアミノ酸配列が推測された。この配列は、哺乳類の1α水酸化酵素遺伝子と約40%、両性類のものと約40%の相同性を示し、鶏1α水酸化酵素遺伝子と考えられた。今後、これらの配列をもとにPCRを行って、腎臓ならびに各臓器での1α水酸化酵素遺伝子の発現量の定量が可能となり、鶏における新規のビタミンD代謝が明らかになるものと考えられる。2.産卵に伴う腎臓でのビタミンD代謝の解明 産卵前(6日齢)ならび産卵期の鶏(300日齢)より腎臓を採取し、1α水酸化酵素遺伝子の発現量についてリアルタイムPCRで定量した。その結果、産卵鶏の腎臓で、1α水酸化酵素遺伝子の発現量が産卵前のものと比較して減少していた。しかしながら、腎臓での1α水酸化酵素遺伝子の発現量は未成熟鶏にエストロジェンを投与すると増加したことから、産卵周期に伴って腎臓での1α水酸化酵素遺伝子の発現量が変化しており、産卵期の活性型ビタミンD産生が変動していることが推測された。今後、腎臓以外の臓器での1α水酸化酵素遺伝子の発現を明らかにするとともに、成熟と老齢における1α水酸化酵素遺伝子の発現量を検討し、鶏のカルシウム代謝におけるビタミンD代謝メカニズムを明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の養鶏産業において、ブロイラーでは起立不能となる脚弱、産卵鶏では卵殻の薄化による破卵が頻発し、多大な経済的損失を被っている。これらには、ビタミンDの関与が深く関わっていることが推察されるが、体内でのビタミンD代謝の詳細は未だ明らかではない。 本研究では、従来言われている腎臓での活性型ビタミンDへの代謝に加え、標的器官における1α水酸化酵素による活性型ビタミンDの局所的産生とカルシウム代謝調節を新たに証明する。また、脚弱と卵殻薄化の発症と局所的代謝の関連を解明するとともに、標的器官での活性型ビタミンD産生を促進し、脚弱ならびに破卵発生の防止を試みる。 本研究目的を達成する上で、平成23年度の研究計画に示した鶏1α水酸化酵素遺伝子のクローニングは、本年度以降の実験の礎をなすもので重要であった。したがって、平成23年度に1α水酸化酵素遺伝子の配列を明らかにしたことは、本研究の現在までの達成度は高いと考えられる。また、産卵に伴う1α水酸化酵素遺伝子の発現量の変化、エストロジェンによって遺伝子発現が誘導されることを新たに明らかにしており、研究計画は達成されたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度で得られた結果を基礎とし、平成24年度以降では、1.腎臓以外のビタミンD標的器官でのビタミンDの局所的代謝を明らかにし、2.老齢産卵鶏における破卵の発生とビタミンDの局所的代謝との関連を検討する。また、3.脚弱を発症した鶏(ブロイラー)におけるビタミンDの局所的代謝を明らかにし、脚弱発症とビタミンD代謝との関連を検討する。最後に、局所的なビタミンD代謝を考慮し、脚弱や破卵の発生の防止の具体的な方策を検討する。 平成23年度において、研究費149,062円の残額が生じたが、これは試薬の納入の遅延と一部の実験(老齢産卵鶏の腎臓における1α水酸化酵素遺伝子の発現量の計測)ができなったことによるものである。これらの実験は、平成24年度も継続して行う予定であり、研究費の残額についても使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は以下の研究の実施を計画している。1.標的器官でのビタミンDの局所的代謝の解明 鶏の標的器官である脛骨骨端、骨髄骨、腸管、卵管より、全RNAを抽出し、リアルタイムPCR法により、標的器官での1α水酸化酵素遺伝子発現量を検討する。また、各組織のパラフィン切片を作製し、in situ hybridization法により1α水酸化酵素遺伝子の発現の局在を明らかにする。標的器官での活性型ビタミンDの代謝については、各標的器官の細胞培養を行い、1α水酸化酵素の発現量を検討するとともに、25-hydroxyvitamin Dから活性型ビタミンDへの代謝を明らかにする。2.老齢産卵鶏におけるビタミンDの局所的代謝の解明 破卵を発生した老齢産卵鶏から標的器官を採取し、リアルタイムPCR法により、1α水酸化酵素遺伝子発現を定量する。また、血液中ならびに標的器官内の25-hydroxyvitamin Dおよび活性型ビタミンD濃度をELISA法により計測し、破卵の発生とビタミンDの局所的代謝との関連を検討する。 この実験に伴う試薬、ガラス器具、プラスチック器具、ニワトリ、飼料などの物品費として850,000円、これまで得られた結果を2012年11月にタイで開催されるアジア太平洋州畜産会議に発表するための旅費として230,000円、投稿論文の英文校閲として謝金等50,000円、学会誌投稿料としてその他70,000円の研究費の使用を計画している。
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