平成25年度では、以下の研究結果が得られた。 1. ビタミンD局所的代謝の調節因子の解明 未成熟な産卵鶏(1日齢)にエストロジェンを5日間連続投与した後、ビタミンD標的器官である腎臓、十二指腸、空腸、回腸、盲腸および直結腸より全RNAを抽出し、1α水酸化酵素mRNAの相対的発現量をリアルタムPCRにより計測した。その結果、エストロジェン投与により、腎臓(対照と比較して1.5倍)、盲腸(1.4倍)、直結腸(5.0倍)で1α水酸化酵素mRNAの発現量が増加した。しかしながら、十二指腸(0.08倍)、空腸(0.1倍)、回腸(0.6倍)では発現量が減少した。また、ビタミンD受容体(VDR)mRNAの発現量についても検討したところ、エストロジェン投与により、十二指腸および盲腸でのVDRmRNA発現量は増加した。これらのことから、ビタミンDの局所的代謝はエストロジェンにより調節されていることが示唆された。 2.25-ヒドロキシビタミンD給与による破卵の防止 老齢産卵鶏(560日齢)に25-ヒドロキシビタミンD(5.5ppm)を5週間給与し、卵殻質の評価ならびに腸管および卵管でのカルシウム結合タンパク質の発現量をウェスタンブロット法により計測した。その結果、25-ヒドロキシビタミンDを給与した老齢鶏では、卵殻質(卵殻強度、卵殻厚)が改善される傾向が見られるとともに、空腸ならびに盲腸でカルシウム結合タンパク質の発現量が有意に増加していた。このことは、老齢鶏への25-ヒドロキシビタミンDの給与はカルシウム吸収を改善し、破卵の防止に有効であることが示された。これまでの結果から、給与した25-ヒドロキシビタミンDは腸管において活性型ビタミンDに局所的代謝され、その標的組織においてイントラクライン/パラクライン/オートクライン的に作用し、カルシウム結合タンパク質の発現を増加させたものと推測される。
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