研究課題/領域番号 |
23580389
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
塚田 光 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (20343212)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 成長ホルモン / 成長ホルモン受容体 / 成長ホルモン作用 / 精巣 / 間質 / セルトリ / 精原細胞 / ライディッヒ細胞 |
研究概要 |
申請者はこれまでに、GH-R 欠損型矮性品種は、体が小さく、足が短い、腹腔内脂肪の蓄積が多いなどの外見的に特異な特徴、インスリン抵抗性の低下、免疫組織重量の減少、免疫機能の減退、腹腔内脂肪の過剰蓄積などの症状が現れることを明らかにした。本申請では、性成熟が遅延のメカニズムを解明しようと試みる。前述の通り、GHR欠損鶏では体重が軽い、体重の増加は性成熟との関与が示唆されているがGHR欠損鶏でみられる低体重は性成熟後でも、正常GHRを有する比較系統の性成熟開始体重に及ばない。すなわち、GHR欠損鶏では体重の増加に因らない性成熟の発達遅延要因が関与すると考えられる。申請者は、この性成熟の遅延が精細管発達遅延を伴うことを明らかとした。精細管の発達と精巣GHR 発現には負の相関が見られた。すなわち、間質(ライディッヒ細胞)割合の減少と正の相関がある。GH の直接作用を考える上で、精巣でのGHR mRNA/蛋白の発現の局在を見ることが重要である。そこで、in istu ハイブリダイゼーション法をもちいてGHR mRNAの精巣での局在を確認した。結果GHRは8週齢精巣の間質や、セルトリ細胞、精原細胞などに発現が確認されたが、セルトリ細胞や精原細胞での発現はまばらであり、一部の細胞にのみの発現が確認されるにとどまった。しかしながら、間質での発現は観察切片全般に確認され間質全体で発現していることが確認された。このことより、ノーザンブロットで確認されたmRNA発現の低下が間質割合の減少に因るとの仮説を裏付けた。間質でのGHRの発現が精巣の発達に重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標である組織形態学的手法を用いた生体内精巣での成長ホルモン受容体欠損の影響を明らかとした。すなわち、精巣発達は精細管網の発達に始まり、精細管の肥大が観察されたが、個体における成長ホルモン受容体欠損の影響は精細管の肥大と精細管網の発達、両方に影響を及ぼす。またそのタイミングは、精細管網の発達遅延が生じ、続く精細管肥大の発達の遅延を引き起こした。さらに、成長ホルモン受容体mRNA発現部位をISH法により観察した。結果、間質での発現が高く間質全体での発言が観察された。また、一部のセルトリ細胞、制限細胞にもその発現が観察されたがその数は僅かであった。この結果とwhole testisからのmRNA発現解析の結果は一致しており、間質でのGH作用の重要性が示唆された。現在までの研究の目的はおおむね達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に行った実験結果から精巣発育はGHRの有無に因り違いが見られその作用部位は精巣間質にあることが明らかとなった。次に発現両の異なるmRNA/proteinを同定する。同定されたmRNA/proteinよりその作用を推測する。同定されたmRNA/proteinにおいてGH感受性を再調査し、成長ホルモンー同定されたmRNA/proteinの作用軸を解明することにより抹消/精巣での新規GH作用を提唱できる。しかしながら、全身性でのGHR欠損動物を使用しているため精巣以外での成長ホルモン作用が間接的に精巣に作用していることも考えられる。この点については移植実験を通してその正当性をさらに検証していく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に行った実験結果から精巣発育はGHRの有無に因り違いが見られその作用部位は精巣間質にあることが明らかとなった。また作用期間は孵化後12週齢未満であることが明らかとなり、GHR発現の最も高い時期は5週齢であった。5週齢の精巣を用い、mRNA(サブトラクション法、マイクロアレー法)、タンパク質(二次元電気泳動)に差がある遺伝子発現を同定する。GH依存的発現を示すとされるIGF-Iはニワトリ精巣では依存的発現を示さない。新規の精巣におけるGH依存的発現を示す遺伝子を同定することが次年度の研究目的である。
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