研究課題/領域番号 |
23580391
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
芦沢 幸二 宮崎大学, 農学部, 教授 (60128353)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | コシジロヤマドリ / 生態 / 精子 |
研究概要 |
本研究は、宮崎県における日本固有繁殖鳥類であるコシジロヤマドリの生態に関する基礎的なデータを集積する目的のために行ったものである。 観察方法はラインセンサス法を用い、宮崎県日南市北郷町山仮屋観察地及び、家一郷谷観察地の2ヵ所で調査をいった。両コースとも往復6.7 kmで、2011年1月から12月まで、それぞれ原則的に2週間に1度の頻度で調査を行った。調査回数は山仮屋調査地で24回、家一郷谷調査地で24回であった。その結果山仮屋調査地では雄1羽、雌1羽、ヒナ0羽、家一郷谷調査地では発見出来なかった。家一郷谷調査地の方が発見率の高いことがわかる。過去の年次別の発見個体数では、山仮屋調査地では2002年から2005年までは年々減少し、2006年,2007年には大きく増加したが2008年には減少が見られ、2009年には再び多少の増加が見られたが2010年には再び大きく減少した。家一郷谷調査地では2004年から2007年まで少しずつ減少が続き、2008年にはわずかに増加に転じたものの、2009年以降は再び低い発見率となっている。時間別の発見個体数は、両調査地とも8:00~10:00の間で最も多く、日の出から2、3時間後の発見が最も多かった。発見方法は両調査地とも直視による発見が多いが、山仮屋調査地では直視・ドラミングによる発見、ドラミングのみによる発見も多かった。林道から発見個体までの距離は、家一郷谷調査地に比べ山仮屋調査地の方が左右に広く森が拓けているため、離れている距離での発見が多く、家一郷谷調査地では近距離での発見が多かった。 以上の結果から、今まであまり明らかではなかったコシジロヤマドリの生態の一部を把握することができた。しかし、未だデータ数が少ないため、詳細を得るために今後も調査を継続して行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宮崎県日南市北郷町山仮屋観察地及び家一郷谷観察地の2ヵ所でのコシジロヤマドリの調査は、年間を通じてほぼ順調に行うことができた。しかし、この1年間では発見個体数が著しく少なかったため、繁殖期における行動や繁殖成功率、婚姻形態を明らかにすることはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度と同様に、コシジロヤマドリの習性を考慮して設定した尾根沿い(宮崎県・山仮屋)と沢沿い(同・家一郷谷)の調査ルートを、それぞれ6.7Kmを週1回の割合で観察する。ラインセンサス法により、発見個体の性別、羽数、行動、確認地点での植生環境を記録し、生息密度の推計を行う。同時に、繁殖期における行動や繁殖成功率、婚姻形態を明らかにする。 さらに、精子の鞭毛には「9+2」と称されるチューブリン(微小管)が存在し、運動はATPaseであるダイニンがATPを分解することで得られるエネルギーにより、微小管を滑らせることで引き起こされる。「滑り運動」は、外的環境の変化を感知して巧みに調節されている。鶏精子の温度による不動化現象は、細胞膜の存在する正常精子ばかりでなく、Triton X-100で除膜したモデル精子でも同様に認められる。本実験では、鶏とコシジロヤマドリ精子を用いて、まず同様の現象が認められるか否かについて確認する。さらに、運動調節に何れのリン酸化酵素が関与しているかを明確にするため、種々のプロテインキナーゼ阻害剤を用いて、除膜精子の運動性とATP消費量に及ぼす影響を検討する。さらに、除膜モデル精子から鞭毛軸糸を分離し、これを(0.5-1mg/mlタンパク質)マウス腹腔内に注射する。その後、常法により鞭毛軸糸タンパク質からモノクロナール抗体を作製する。得られた抗体のスクリーニングを行うため、除膜精子の再活性化液に抗体を添加し、精子の運動性の変化を解析するとともに、ウエスタンブロット法により分子量の推定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
各種試薬類の購入に加え、野性鳥類の生態と精子の生理学的研究を行うためには、ダチョウの生態と繁殖に関する研究では世界的にも著名な、オーストラリアの西オーストラリア大学に所属しているDr. Irek Maleckiのもとで技術的指導を受けるのは不可欠であるため、研究打ち合わせのための訪問旅費に充てる計画である。
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