研究課題
【目的】日本にしか生息しないヤマドリの亜種であるコシジロヤマドリは、準絶滅危惧種に指定され、宮崎県の県鳥である。しかし、その生態はよく知られていない。本研究は、コシジロヤマドリが生息する一定の地域を定期的に調査することにより、未だ不明な点の多いコシジロヤマドリの生態を明らかにする目的で毎年継続的に行っているものである。【方法】調査は、ラインセンサス法を用いて、宮崎県日南市北郷町山仮屋付近と家一郷谷付近で行った。前者は山の中腹沿い、後者は渓流沿いであり、距離は両コースとも往復6.7 kmである。山仮屋調査地は2002 年5月から2013年12月まで、家一郷谷調査地は2002年9月から2013年12月まで、それぞれ2週間に1度の頻度で観察した。なお、日の出時刻から調査開始時刻の間を一定にするため、季節によって出発時刻を変更して調査を行った。ヤマドリ発見時には、その位置や雌雄の別、発見時刻、発見場所の植生などを記録した。【結果】12年間にわたる調査において、山仮屋調査地では雄38羽、雌16羽の合計54羽、家一郷谷調査地では雄39羽、雌32羽、雛2羽の合計73羽を発見できた。発見時期は、繁殖期である3~5月が多く、夏季の発見は少なかった。山仮屋調査地では2002年から2005年までは年々減少していたが、2006年に増加に転じ、2007年までやや上昇した。しかし2008年から2011年は再び減少傾向を示した。これに対して家一郷谷調査地では、年次別の著しい変動は見られなかった。発見時刻は日の出から2~3時間の間が多かった。発見場所の植生は、山仮屋調査地では広葉樹と植林杉の混在地、家一郷谷調査地では広葉樹の割合が高かった。発見個体と林道との距離を測定したところ、山仮屋調査地では5~30 mであるのに対して、家一郷谷調査地では0~10 mと比較的近い距離での発見が多かった。
2: おおむね順調に進展している
今まであまり明らかではなかったコシジロヤマドリの生態の一部を把握することができたため。未だデータ数が少ないため、詳細な値を得るためには、今後も調査を継続して行う必要がある。
コシジロヤマドリの生態調査は、次年度も継続して行う。一方、ヤマドリ精子の特性をさらに追究するため、ニワトリ精子をモデルとして、微小管の制御機構について研究を推進する。すなわち、精子の原動力となっている微小管はチューブリンの重合体で、αチューブリンとβチューブリンからなる規則正しく重合してできた円筒状の構造体である。チューブリンは、アセチル化、リン酸化、パルミトイル化、脱チロシン化、Δ2化、ポリグルタミン酸化、ポリグリシン化などの翻訳後修飾を受けるため、極めて多様である。アセチル化以外の修飾は、微小管表面に位置するチューブリンC末端領域に集中し、微小管表面の多様性を生み出している。修飾による微小管表面の多様性は、微小管と微小管結合タンパク質との相互作用に強い影響を与え、微小管の安定性や分子モーターの移動先などを制御している。細胞内には、微小管の伸長を促進させる因子と短縮を促進させる因子の双方が存在しており、組織や細胞あるいは細胞周期などに応じて微小管のダイナミクスが調節されている。このうち前者を微小管安定化因子、後者を微小管不安定化因子あるいは微小管崩壊因子と総称している。これまで述べてきたように、鞭毛軸糸のチューブリン分子の安定化・不安定化が運動調節に関与している可能性も否定出来ない。そこで来年度の本実験では、精子に微小管重合阻害剤であるIndibulinを添加し、精子の可逆的不動化現象と微小管重合との関係を追究する予定である。
当該年度に使用可能な予算を順調に消化してきたが、最後に残った6,750円では阻害剤などの試薬が購入できないため、最終的に若干の未使用額が生じた。次年度に各種試薬等の購入の補助に充てる。
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Mutation Research
巻: 755 ページ: 100-107
10.1016/j.mrgentox.2013.03.012.