研究実績の概要 |
【目的】日本固有繁殖鳥類は、わずか9種だけである。ヤマドリもその1種で、生物多様性保全の立場から重要な位置を占めている。しかし、その生態はよく知られていない。本研究は、亜種コシジロヤマドリが生息する一定の地域を定期的に調査することにより、未だ不明な点の多い生態を明らかにする目的で行ったものである。
【方法】調査は、宮崎県日南市北郷町山仮屋付近(北緯31°44‘16“,東経131°21’18”,標高390~455 m)と、家一郷谷付近(北緯31°46‘20.18“,東経131°21’12.61”,標高270~395 m)の2 つのコースで行った。距離は両コースとも往復6.7 kmである。それぞれ原則的に2 週間に1 度の頻度で観察した。日の出時刻から調査開始時刻の間を一定にするため、季節によって出発時刻を変更して調査を行った。ヤマドリ発見時には、発見地点の位置を測定した。また、発見個体の雌雄の別や時刻、植生なども併せて記録した。
【結果】総調査回数は、13年間で山仮屋調査地では299回、家一郷谷調査地で285回の合計584回であった(調査時間:約2, 340時間, 調査距離:約3, 910 km)。その結果、山仮屋調査地では雄41羽、雌14羽の合計55羽、家一郷谷調査地では雄42羽、雌36羽、雛2羽の合計80羽を発見することができた。このことは、1羽を発見するのに17.3 時間、29.0 km要したことになる。発見時期は、繁殖期である3~5月が多かった。調査期間を通して、年々減少する傾向を示した。発見場所の植生についてみると、森林全体に占める広葉樹林の割合は少ないにもかかわらず、山仮屋観察地では広葉樹と植林杉の混在地、家一郷谷観察地では広葉樹での発見が多かった。以上の結果から、広葉樹林の維持、増加が減少傾向にあるコシジロヤマドリの生息数回復のための適切な方策であると推察された。
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