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2012 年度 実施状況報告書

絶滅動物の体細胞核移植によるクローン個体作製に関する基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 23580395
研究機関近畿大学

研究代表者

加藤 博己  近畿大学, 先端技術総合研究所, 准教授 (60330320)

キーワード異種間核移植 / クローン動物 / 絶滅動物
研究概要

平成24年度には、異種間核移植胚の作製とその発生能力の改善方法を検討した。核ドナー細胞としてはアライグマの耳介から採取・培養された繊維芽細胞を用い、レシピエント細胞質には入手のしやすさからB6D2F1マウスの未受精卵を除核して用いた。対照区としては同じB6D2F1マウスの卵丘細胞を用いた。マウスレシピエント細胞質へアライグマドナー核を注入し、その後再構築胚の活性化処理の間にTrichostatin A(TSA, 5nM)処理を行った。前核様構造の形成については、核ドナーとしてアライグマ培養繊維芽細胞を用いた実験区(88%)とマウス卵丘細胞を用いた対照区(100%)の間に有意差は無かった。しかし、2細胞期胚へ発生した胚数はアライグマ培養繊維芽細胞を用いた実験区(68%)とマウス卵丘細胞を用いた対照区(88%)の間に有意差が存在した(P<0.05)。さらに培養を継続すると、マウス卵丘細胞を用いた対照区では43%の胚が胚盤胞期に達したのに対して、アライグマ培養繊維芽細胞を用いた実験区では胚盤胞期に達した胚は存在せず、2個の胚のみが(3%)4細胞期胚に達しただけであり、ほぼ全ての胚が2細胞期でその発生を停止した。アライグマ培養繊維芽細胞を核ドナー細胞に用いた実験区において得られたこれら2個の4細胞期胚が発生を停止した後、PCR法によってアライグマ特異的な核ゲノムの存在を検討したが、アライグマ特異的な核ゲノムの存在は確認されず、単為発生によって得られたものと考えられた。さらに、マウスレシピエント細胞質へアライグマドナー核を注入して作製した再構築胚の発生能力を改善するため、アライグマミトコンドリアを培養細胞から回収し、マウスレシピエント細胞質へアライグマ核を収入する際にアライグマミトコンドリアを共注入して再構築胚を作製したが、やはり再構築胚の発生は全て2細胞期で停止した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成24年度の研究の達成度は75%と考える。その理由としては、平成24年度にはマンモスの核移植における適切なレシピエント細胞質の選択を行う予定であったが、現有するマンモスのサンプルを用いて予備実験として行った研究の結果、マウス卵細胞質へ注入した核に変化が全く見られなかったことから、このサンプルは脱水が非常に進んでいる状態にあり、実験に供試するには不適であると考えられたことによる。その一方で、平成24年度中にロシア連邦サハ共和国ヤクーツク市のサハ共和国科学アカデミーの所有する凍結マンモス組織の提供を受けることが正式に決定し、より状態の良いマンモスサンプルを入手して平成25年度に再度実験を行う予定である。また、平成23年に入手した現生のマルミミゾウの培養細胞を対照区として使用し、マンモス及びマルミミゾウを含む長鼻目の体細胞を核ドナーとした異種間核移植による再構築胚の作製とその発生能力の検討を行う準備が整っている。また、研究計画ではウサギ卵を使用して体細胞核移植を行う予定であったが、除核未受精卵子を供するウサギの確保が行えなかったため、平成24年度もマウス卵で代用した。平成25年度にもウサギ卵子を利用する予定であるがそれが困難である可能性も考え、マウス卵ではなくハムスター卵を利用することも考えている。異種間核移植による再構築胚の発生能力の改善について、核ドナー細胞と同種のミトコンドリアを活性を維持したまま回収し、核移植時に共注入することには成功した。平成25年度はさらにミトコンドリアの共注入の諸条件を詰め、異種間核移植による再構築胚の発生能力の改善を進めていく予定である。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策としては、平成23・24年度で未達であったマンモスの核移植における適切なレシピエント細胞質の選択について、現生のマルミミゾウの培養細胞を対照区の一つとした実験を実施しその結果を得る。さらに、申請時の計画に従って、長鼻目由来体細胞と先の実験において適切と判断されたレシピエント細胞質を用いた異種間核移植胚の生存性の向上に関する研究を行い、ユニバーサルレシピエント細胞質技術の確立と、作製された再構築胚からの長鼻目ハイブリッド細胞株の樹立を目指した研究を行っていく。その際にはウサギ卵を利用する予定であるがそれが困難である可能性も考え、異種の精子を受け入れて精子頭部を膨化させる高い能力を示すハムスター卵を利用することも考えている。また、異種間核移植胚の生存性の向上に関する研究について、核ドナー細胞と同種に由来するミトコンドリアの共注入の諸条件を詰めていき、さらに核ドナー細胞と同種に由来するリボソームの共注入も実施していく予定である。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度には、主に実験動物としてのウサギの利用が無かったため物品費が当初予定額よりも少なく済み、直接経費のうち178,010円が使用されずに残った。また謝金は使用されず、50,000円が残された。その一方で旅費がかさみ-9,640円となり、差し引き232,011円を平成25年度に繰り越すに至った。このため、平成25年度の直接経費は、平成25年度直接経費請求額1,300,000円に平成24年度の残額232,011円を加えた1,532,011円を使用する。その内訳は、物品費として919,011円を使用し、旅費として463,000円を、人件費・謝金として50,000円を、その他の費用として100,000円を使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] マンモス等古生物研究の現状2012

    • 著者名/発表者名
      加藤博己
    • 雑誌名

      近畿大学先端技術総合研究所紀要

      巻: 17巻 ページ: 31-38

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公開日: 2014-07-24  

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