研究課題
哺乳類の配偶子ならびに胚を取り扱う生殖技術あるいは生殖医療において、十分に発育し、受精可能で、発生能力のある卵子を得ることは必須条件である。ヒトやブタの場合卵母細胞の直径が115 micrometerに満たない発育途上の卵母細胞は受精が可能な成熟卵子に細胞周期を進めることが難しく、現在の生殖医療技術では直径が115 micrometerに満たない発育途上卵母細胞から児を得ることは困難である。それ故、体外でヒト発育途上卵母細胞を培養することができれば、生殖医療におけるコスト、時間の削減ならびに患者に及ぼす副作用の低減につながるだけでなく、現在の技術では児を得ることが出来ない患者にも児を得る道を開く。そこで、生殖医療への応用ならびに効率的な家畜生産と改良を目指して「ブタ発育途上卵母細胞から産子を作出する培養系の構築」に取り組んでいる。特に、体外培養によるミトコンドリア活性の低下を防ぐため、アポトーシス抑制、ミトコンドリアへの長鎖脂肪酸の取り込み促進、β酸化によるATP 合成の促進効果を有するカルニチンによるブタ発育途上卵母細胞の発育能の促進に取り組んだ。既にL-カルニチンを添加した培養液で培養することにより、ブタ発育途上卵母細胞の生存性が向上すること、 L-カルニチンを添加して培養した卵母細胞の超微小レベルでの形態観察により、活性型ミトコンドリアの存在を確認した。さらに、卵母細胞を取り巻く顆粒膜細胞と卵母細胞間のコミュニケーションが卵母細胞の発育に重要であることに着目し、顆粒膜細胞に取り込まれたcalceineが卵母細胞に移行するかどうかを計測した。その結果、L-カルニチンを添加することにより、両細胞間のgap junctionの機能の向上が明らかにされた。ブタ体外受精で多発する多精子受精を回避するため、顕微授精技術を確立し、体外培養により発育したブタ卵母細胞に顕微授精を行い、受精卵の作成に成功した。
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