研究課題/領域番号 |
23580398
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
木村 康二 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所 家畜飼養技術研究領域, 主任研究員 (50355070)
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キーワード | ウシ / 胚 / プリン誘導体 / 代謝 |
研究概要 |
ウシ初期発生胚の培養法(低グルコース・低酸素等)は非常に特殊である。ウシ胚培養系の改善のため、さまざまな物質のウシ胚における代謝が明らかとなっているが、核酸の主要構成成分である塩基については未解明な点が多い。本研究ではプリン塩基に注目し、ウシ胚におけるこの物質代謝を明らかにすることでウシ胚培養系の改良に新規の情報をもたらすとともに、プリン塩基のウシ胚発生に及ぼす影響のメカニズムについて検討する。本年度はアデニンサルベージ経路のウシ胚発生に及ぼす影響について検討した。ウシ胚1細胞期から8細胞期または8細胞期から胚盤胞期の培養液にアデニンサルベージ酵素であるアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ阻害剤である9-エチルアデニンをアデニン存在あるいは非存在下で添加し、胚の発生率を調べた。1-8細胞期において阻害剤の添加により有意に発生は低下し、その効果はアデニン存在下でより大きかった。8細胞期-胚盤胞期胚においても、阻害剤の添加により発生率は有意に低下したが、アデニンの存在によりその効果が高まる傾向はなかった。また、この阻害剤添加は1-8細胞期において8細胞期-胚盤胞期胚よりもより低濃度で発生を阻害した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プリン誘導体の添加やプリン誘導体サルベージ酵素の阻害剤のウシ胚発生に与える影響について予定通り実験を実施し、プリン誘導体2種それぞれについて各胚発育ステージに及ぼす影響の差を明らかにした。またサルベージ酵素阻害により胚発生が抑制することを明らかとし、プリン誘導体添加による発生停止はその代謝産物によるものではなく、誘導体そのものが胚発生に何らかの影響を及ぼすことが示された。以上の結果は当初の実験計画と合致しており、研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果からプリン誘導体の添加はウシ胚発生を有意に阻害し、プリン誘導体サルベージ酵素の阻害によっても胚発生が抑制されることから、プリン誘導体の代謝産物が発生を阻害するのではなくそのもの自体が胚発生に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。次年度は計画通り発生停止が細胞分裂周期のどの時期に生じているのか、またそのメカニズムについて明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度配分額のうち、30万円をウシ卵巣採材経費、15万円を実験補助員の賃金、10万円を学会発表のための旅費、65万円を一般試薬・消耗品費に用いる予定である。また昨年度末食肉センターでのと殺が減少したため、卵巣購入数が見込みよりも少なかったため繰越金92,838円が発生したが、今年度に一般試薬費として使用する予定である。
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