研究課題
本研究の目的は、1.イヌの乳腺腫瘍の発症機構について、遺伝性乳癌原因遺伝子BRCA2の変異を基点とするゲノム不安定化に焦点を あ てて、腫瘍細胞において特定の遺伝子に変化が認められるかどうかを調べること、2.変異が予想されるc-MYC(MYC)等 の癌遺伝子やい くつかの癌抑制遺伝子、ゲノム安定化遺伝子の機能解析を通じてイヌの乳腺腫瘍発症機構の解明をめざすこと、とした 。本年度は、2のがん抑制遺伝子に焦点をあてて研究を進めた。Reduced Expression in Immortalized Cells(REIC/Dkk-3)は、正常線維芽細胞に対し不死化ヒト線維芽細胞で発現が低下する遺伝子として同定された。そして、REIC/Dkk-3はヒトの様々ながん組織で高頻度に発現が低下しており、REIC/Dkk-3発現低下がん細胞にその遺伝子を導入して強制発現させるとがん細胞の増殖が抑制されるため、がん抑制遺伝子のひとつと考えられる。イヌの本遺伝子機能に関する報告はないため、本研究ではイヌのREIC/Dkk-3ホモログをクローニングし、構造と機能を解析した。クローニングしたイヌREIC/Dkk-3ホモログは、既に登録されているイヌREIC/Dkk-3予測配列(XM_534060.3)より213塩基、71アミノ酸長く、ヒトでがん細胞にアポトーシスを誘導するN末端の78アミノ酸領域を高度に保存していた。正常組織における発現解析より、イヌREIC/Dkk-3はヒトとマウス同様全身性に発現していることが明らかとなった。REIC/Dkk-3タンパク質は正常乳腺組織では発現が見られたが、乳腺腫瘍組織および乳腺腫瘍由来細胞株では発現が減少していた。さらに遺伝子導入により、イヌの乳腺腫瘍細胞株においてアポトーシス誘導が観察された。
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Vet. J
巻: 197(3) ページ: 769-775
10.1016/j.tvjl.2013.04.024