研究課題/領域番号 |
23580401
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
齋藤 正一郎 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (60325371)
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研究分担者 |
阿閉 泰郎 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90151084)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 蝸牛 / グルタミン酸 / グルタミン酸トランスポーター / グルタミン酸レセプター / RT-PCR / In situ hybridization / ラセン神経節細胞 / 有毛細胞 |
研究概要 |
聴覚受容器「蝸牛」は、ヒトにおいては他者との協調関係を築くのに、動物においては 外敵から身を守るとともに捕食のためにも重要な器官であり、グルタミン酸がシグナル伝達において主要な働きをしていることが強く示唆されている。一方、グルタミン酸関連分子の発現性や局在性については、蝸牛は側頭骨内にあり美しい組織標本を得ることが難しいことも相まって、未だ不明な点が多い。本研究では、正常および損傷治癒過程の蝸牛に おけるグルタミン酸関連分子の挙動について、形態学的に解明することを目的とする。 本年度は、脊椎動物の中で例外的に、有毛細胞が再生することができる鳥類の蝸牛におけるグルタミン酸関連分子の発現性・局在性について明らかにした。哺乳類においては、コルチ器で受容された音刺激を橋に存在する蝸牛神経核へと伝達するラセン神経節細胞は小胞性グルタミン酸トランスポーター(VGLUT)1型を発現していると考えられている一方、鳥類では哺乳類の1型VGLUTに相当する分子が存在しないとも考えられている。ハトを材料としてRT-PCRおよびin situ hybridizationにより検討したところ、RT-PCRでは2型および3型VGLUTの両方が検出されたが、3型VGLUTの発現性は非常に微弱であった。そのため2型VGLUT mRNAを対象としたin situ hybridizationを行ったところ、ラセン神経節細胞のほぼ全てにおいて陽性反応が観察された。以上より、ハトの聴覚受容器のラセン神経節細胞はグルタミン酸作動性神経細胞であり、グルタミン酸の輸送において2型VGLUTが主に働いていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は哺乳類および鳥類の蝸牛におけるグルタミン酸トランスポーターの解析を主な目標としており予、計画通り、RT-PCRによる発現解析および一部についてはin situ hybridizationによる局在の解明を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
計画通りに、哺乳類、鳥類の蝸牛において、AMPA型、Kainate型、NMDA型のグルタミン酸レセプターがどのように、どの細胞に発現しているかを解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に持ち越す研究費は無い。次年度に新たに受領する研究費は、一般試薬、遺伝子工学用試薬、実験用動物およびプラスチック器具の購入に使用する。これらの金額は、これまでの経験を元に 概算した、必要最低限の金額である。In situ hybridizationにおいて、DIG標識RNAプローブの作製に特に費用がかかり、約6万5千円で20 回しか標識することができず、染色できるスライド枚数は限られたものである。本研究ではin situ hybridizationを用いた組織解析が中心となるため、計上する遺伝子工学試薬の購入費が消耗品費の中で特に高額となってしまっている。また、一部実験の準備を学生等に依頼する事が予想されるため、そのための謝金を計上している。加えて、研究成果と国際誌に投稿するための研究成果投稿料と論文 別刷り代を計上している。また研究成果を学会で発表するための旅費を計上している。
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