研究課題
好中球は種々の活性酸素を産生して、殺菌という生体防御に重要な機能を担っている。ミエロペルオキシダーゼは、好中球のみに存在する酵素であり、過酸化水素から次亜塩素酸が産生される反応を触媒する。平成24年度までの本研究は、ミエロペルオキシダーゼのノックアウトマウス (MPO-KOマウス)が、生菌感染時だけでなく、ザイモザンと称する菌体成分を肺投与しても重篤な肺炎を発症するという興味深い現象のメカニズムを探った。その延長として、平成25年度はカンジダ菌の死菌を肺投与して、MPO-KOマウスの肺炎重篤化を解析した。その結果、1.MPO-KOマウスにカンジダ死菌を経鼻投与すると、野生型マウスに比べて重篤な好中球性の肺炎が発症すること、2. そのMPO-KOマウスの肺組織中では、MIP-2とKC量が一過的に高値を示し、さらに抗MIP-2抗体および抗KC抗体を経鼻投与するによって肺炎が緩和されたことから、これらのケモカインの過剰産生が肺炎重篤化の一因であると考えられたこと、3.MIP-2の主たる産生源は好中球であること、4.好中球のMIP-2は、Syk/ERK/NF-κB経路を介して産生され、カンジダ死菌の刺激を受けたMPO-KO好中球では、Syk、ERK、NF-Bのすべての活性が野生型マウスよりも顕著に高いことが判明した。以上のことから、MPO-KO好中球におけるMIP-2遺伝子発現系の過剰な活性化がMPO-KOマウスにおける肺炎重篤化の一因であると考えられた。これらの知見は学術論文としてまとめた(Honme 他)。
3: やや遅れている
当初立案した研究テーマのうち、「CGD マウスのザイモザン誘発性肺炎の重篤化機構の解析」のみが完了していない。ほぼ着実に遂行できてきたが、培養細胞系を用いた好中球の解析に必要となる優良試薬の入手の遅れにより最終段階の解析が滞っている。
現在までの達成度の項目に記した試薬が近々に入手可能となったので、この試薬を用いた最終段階の解析を早急に実施し、平成26年度前半には本研究は完了する計画である。
当初立案した研究テーマのうち最後に残されている、「CGD マウスのザイモザン誘発性肺炎の重篤化機構の解析」を遂行するにあたって、細胞培養レベルで好中球の機能を解析するために必要となる優良試薬が昨年度中には入手困難であったため、その試薬を次年度に購入するための使用額が生じた。次年度使用額は、上に記した優良試薬の購入のためのみに使用する。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
Inflamm. Res.
巻: 62 ページ: 981-990
10.1007/s00011-013-0656-6
http://yaratani.sci.yokohama-cu.ac.jp/