研究課題
流産モデルマウスにおける補体因子の全身性および胎盤局所における変動を捉えた。胎盤においては、正常な状態ですでにコントロールマウスに比べ、補体C3および活性化因子adipsinの増加が認められた。流産後の変化では、これらの因子の胎盤内発現レベルはさらに増加した。AdipsinとC3の胎盤局在を調べたところ、両因子とも脱落膜の血管内、迷路部の母体側血管洞に陽性反応が認められた。Adipsinについて、胎盤・肝臓・乳腺でmRNAの発現を調べたところ、乳腺の発現量が最も高かった。血清中にもadipsinは検出されることから、妊娠期の乳腺組織がadipsinの主要な産生部位であり、血行性に胎盤へ運ばれて定着・機能する可能性が考えられた。補体抑制因子crryについて解析すると、流産モデルマウスで正常に残存している胎盤では、コントロールマウスの正常胎盤に比べてcryyの発現レベルが亢進していた。モデルマウスの流産部位ではcryyの顕著な低下が認められた。これにより、crryの発現変動が流産発症と関連している可能性が示唆された。Adipsinが有する流産発症機序に関わる作用について検討するため、正常の妊娠動態を示すマウスに、adipsinリコンビナントタンパクを投与した。投与により流産率が増加し、胎盤組織の変性・線維化・血栓形成が誘導され、妊娠維持に重要なサイトカインと脂質代謝関連因子が変動した。Adipsinは胎盤局所における間葉系への作用、および液性因子を介した全身性の効果を介し、流産の誘導に関与することが示された。
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