[目的] スズメ目の“単一嗅球”は、左右が癒合した嗅球でありながら、哺乳類と同様に左右鼻腔の嗅上皮から独立した嗅神経の投射を受けている。また、鼻腔に占める嗅上皮の割合が少ないことから、限定された嗅覚能を持つと予想される。そのため、陸棲動物の嗅覚の進化と機能を考察するユニークな研究モデルになると期待される。本研究は、キンカチョウの嗅覚系を解剖学的に解明して、この動物を嗅覚研究のモデル動物とするための基盤を確立することを目的としている [研究実績] (1)研究概要:平成25年度は、前年に引き続き、免疫組織化学染色、神経トレーサー、透過型および走査型電子顕微鏡によるキンカチョウの嗅上皮の分布領域および微細組織構造の解析を行い、このトリの嗅上皮の形態学的特性の確定を行った。また、このトリの餌選択における匂い情報を基盤にした嫌悪学習が成立するか否かの解析を試みた。(2)研究結果:組織・解剖学的解析により、(i)嗅神経への神経とレーサー投与によって鼻腔内の嗅上皮の分布領域を検索した結果、キンカチョウの鼻腔の中鼻甲介の背側から鼻腔の最後部にかけて、嗅上皮が分納している事が確認された。(ii)透過型電子顕微鏡の観察によりキンカチョウの嗅上皮は、嗅細胞、支持細胞、基底細胞というニワトリや一般の哺乳類の嗅上皮と同様の細胞群で構成されていることが明らかとなった。さらに、(iii)嗅細胞の鼻腔表面は線毛と微絨毛を混合することが最終的に明らかとなった。(iv)走査型顕微鏡による観察で、嗅細胞の表面の線毛は極めて長いことが判明した。また、行動解析により、キンカチョウにおいても嗅覚刺激による嫌悪学習が成立する可能性が示唆された。 以上の結果より、キンカチョウの嗅上皮は極めて狭い領域に形成されており、嗅上皮は他の脊椎動物と共通した細胞構造を持つこと、嗅覚による嫌悪学習試験が可能であることが示唆された。
|