研究課題
代表者らは子宮・胎盤における一酸化窒素(NO)産生をスピントラップ・電子常磁性共鳴吸収(EPR)法により解析し、同時にNO合成酵素(NOS)の発現調節を検討してきた。生体におけるNO産生の解析が困難なこともあり、胎盤におけるNO産生の調節とその役割については不明な点が残されている。ラット胎盤におけるNO産生を検討する一環として、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)発現に及ぼすNOの影響を検討し、さらにタンパク質のS-ニトロシル化が関与しているか検討した。NOS阻害剤NG-nitro-L-arginine-methyl ester(L-NAME) を妊娠15日のラットに持続注入し、スピントラップ・EPR法によりNO産生量を経時的に解析した。L-NAMEの持続注入により、NO産生量は対照群より約85%減少していた。さらに、VEGF 発現はNOS阻害6時間後には有意に減少したが、24時間後には回復していた。一方、低酸素誘導因子(HIF)-1αと誘導型NOSの発現は、経時的に増加し、24時間後には有意差を示した。同じ妊娠日齢の胎盤を用いた組織片培養においてリポ多糖(LPS)でiNOS発現を誘導すると、VEGF発現は増加傾向を示した。さらに、LPSと L-NAMEの併用によりVEGF発現は有意に減少したことから、in vitroにおいてもNOがVEGF発現を促進していることが示された。以上の結果は、in vivoとin vitroにおいてNOがVEGF発現を誘導し、ラット胎盤におけるこの時期のNO産生はHIF-1を介したNOとVEGFの相互作用により維持されていることが示唆された。
すべて 2013
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Biosci. Biotechnol. Biochem
巻: 77 ページ: 971, 976