ラットに致死的なボルナ病(BD)を起こすボルナ病ウイルス(BDV)高病原性株は免疫応答非依存的に中枢神経系を直接傷害し、致死的なBDを発症させるという概念に基づいてBDV高病原性株(CRNP5)、BDV標準株(CRP3)と4ヵ所のアミノ酸変異を組み合わせて導入した遺伝子組み換えBDV(rBDV)9株を新生仔ラットに脳内に接種し、経過観察と解析を行った。1.11種のBDV感染による臨床徴候と体重については脳内接種後4日おきに8週間、体重を測定し、症状を0(無症状)から3(致死的)にスコア化した。CRNP5の平均スコアが各観察日において最も高く、rBDVについてはCRP3に比較して、有意な高値あるいは高値傾向を示す株が4株存在した。前述の4株を接種された群の体重増加は他のrBDVとCRP3接種個体に比較して、接種20日目以降、有意な低値あるいは低値傾向を示した。2.抗ウイルス抗体を用いた解析とウイルス力価測定について、脳の矢状断切片を作製し、2種類の抗ウイルス抗体(抗p24抗体と抗p40抗体)を用いてBDVの分布について免役染色を行い経時的に比較、解析を行い、全接種個体の脳で陽性所見が得られた。ウイルス力価は致死的なBDを発症し、観察途中で採材された個体が観察期を満了した個体と比較して有意に高かった。3.血管周囲単核細胞浸潤のあった脳の部位別に0から4にスコア化し、総計した値を髄膜脳炎の程度として評価した。最高値は12であったが、囲管性細胞浸潤はrBDV接種群にのみに認められ、致死的BDV個体でスコアが高い傾向が示された。4.高病原性に関与していると考えられるアミノ酸変異の組み合わせが明らかになった。5.脳病変の部位別の数値化では致死的症状の責任病変を形態学的に特定できなかった。6. 免疫応答非依存的に直接傷害されていると推定された他のラットの脳病変について検索を行なった。
|