研究課題/領域番号 |
23580416
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
岸上 哲士 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (10291064)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アセチル化 / 初期胚 |
研究概要 |
本研究課題は、非ヒストンタンパク質としてαチューブリンのアセチル化について初期発生における役割や制御機構を明らかにし、さらに体細胞クローン胚など低発生率を示す各種胚におけるαチューブリンのアセチル化異常の有無と低発生率の表現型への寄与を明らかにすることである。当該年度である平成23年度は、卵母細胞や受精卵におけるαチューブリンのアセチル化についてこれまで得られたαチューブリンのアセチル化について詳細に解析を行うとともに、卵子活性化にともなうαチューブリンの高アセチル化の分子機構を解明するため、卵子活性化後のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性の経時的変化を測定した。その結果、卵子内では、HDAC阻害剤(TSA)存在化では活性化しない場合にもαチューブリンの高アセチル化が誘導できること、また活性化にともないHDAC活性が有意に低下することを見出した。さらに、排卵後の卵子が試験管内で細胞老化させた場合に、経時的にαチューブリンのアセチル化が蓄積することを見出した。以上の結果から、減数分裂停止中の卵子内では、αチューブリンのアセチル化状態が厳密に制御されていること、発生能が低下する老化卵子ではその制御機構が崩壊していることが示唆された。このように、今年度の研究を通じてαチューブリンのアセチル化の制御機構の存在を示唆することができ、またその機構が卵子の発生能や質に深く関与しているか、その指標になる可能性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的達成ための3つの研究計画の柱、1.卵子および着床前胚におけるαチューブリンのアセチル化の動態解析2.卵子アセチル化チューブリンの機能解析3.様々な型の胚におけるチューブリンのアセチル化異常の検証、のうち、1および3について今年度は進めることができたから。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年年度は、初期胚でαチューブリンのアセチル化がダイナミックに変化することが示唆された。平成24年度では、特にさまざまな胚(クローン胚など)においてαチューブリンのアセチル化状態の違いついて詳細な検討を行う予定である。さらに、胚においてαチューブリンのアセチル化が変化することからαチューブリンの脱アセチル化酵素であるHDAC6の阻害剤が胚発生に与える影響を明らかにすることで、胚発生におけるHDAC6の重要性について調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
胚の解析を行うため、マウス費ならびに培養液などの試薬代、そして研究補助の人件費に用いる予定である。平成23年度の未使用金額については、実験補助の採用が間に合わず、平成24年度以降人件費を中心に使用する予定である。
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