研究課題/領域番号 |
23580416
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
岸上 哲士 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (10291064)
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キーワード | アセチル化 / 初期胚 / 卵子の老化 |
研究概要 |
本研究課題は、非ヒストンタンパク質としてαチューブリンのアセチル化について初期発生における役割や制御機構を明らかにし、さらに体細胞クローン胚など低発生率を示す各種胚におけるαチューブリンのアセチル化異常の有無と低発生率の表現型への寄与を明らかにすることである。本研究の初年度(平成23年度)において、排卵後の卵子が試験管内で細胞老化させた場合に経時的にαチューブリンのアセチル化の異常な蓄積が起こることを見出しており、当該年度(平成24年度)は引き継ぎ、老化に伴うアセチル化に影響を及ぼすさまざまなヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の影響を調べ、クラスI/IIのHDACの阻害剤であるトリコスタチンAはアセチル化を促進するが、クラスIIIのHDACの阻害剤であるニコチンアミドは逆にアセチル化を抑制することが明らかにした(Arum et al., JRD 2013 in press)。さらに、初年度に引き続き、卵子活性化にともなうアセチル化制御の研究を行った結果、卵子の活性化に伴うタンパク質の高アセチル化やHDACの活性低下に加えて、HDAC阻害剤による非ヒストンタンパク質の高アセチル化への誘導について明らかにした(Matsubara et al. BBRC 2013 in press)。このように、本研究を通じて卵子においてα チューブリンに代表される非ヒストンタンパク質やヒストンなどのアセチル化が卵子活性化にともないダイナミックに変化することを示し、その制御機構の存在を示唆することができた。さらに、その制御機構が不安定で老化にともない制御不能になるが薬剤で制御できることも示すことができた。今後、卵子の老化にともなう質低下を抑制する技術開発などへの応用も期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的達成ための3つの研究計画の柱、1.卵子および着床前胚におけるαチューブリンのアセチル化の動態解析2.卵子アセチル化チューブリンの機能解析3.様々な型の胚におけるチューブリンのアセチル化異常の検証、のうち、1および3について今年度は進 めることができ、また2報の論文として発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、初期胚でαチューブリンのアセチル化がダイナミックに変化することが示唆され、卵子の老化により異常になることを示すことができた。最終年度である平成25年年度は、最近の論文等の報告において、αチューブリンのアセチル化が小胞輸送やオルガネラの形成に関与していることが示唆されていることから、老化卵子や体細胞クローン胚を用いて小胞輸送の異常の有無の検討し、ヒストン脱アセチル化阻害剤によるそれらの影響を解析ししていく。実際、すでに予備実験ながら卵子の老化にともない様々なオルガネラが異常になることを示す結果が得られている。さらに結果を確認するとともに、詳細な解析を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
胚の解析を行うため、マウス費ならびに培養液などの試薬代、そして研究補助の人件費に用いる予定である。平成24年度の未使用金額については、今回新しい研究展開が見られたので抗体などの試薬に使用する予定である。
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