研究課題/領域番号 |
23580417
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
守村 敏史 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 助教 (20333338)
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研究分担者 |
井上 健 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 疾病研究第二部, 室長 (30392418)
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キーワード | autophagy / 小胞体ストレス / 酸化 / 神経変性疾患 / ALS / SOD1 |
研究概要 |
これまで同定した二つのautophagy関連食品成分の臨床応用を目指し、autophagyの不全が疾患発症の重要な因子である筋萎縮性側脊硬化症(ALS)の、特に孤発性ALSを標的に研究を進めた。この二つの成分は構造的に非常に近いにも関わらず、Autophagyの上流のキナーゼであるAktの活性を正と負それぞれ逆に制御した事から、異なる生物活性を示す事が期待された。 酸化ストレスによる蛋白質や核酸、脂質の修飾は、多くの神経変性疾患疾患や生活習慣病に共通した発症要因と考えられている。家族性ALSの原因遺伝子産物であるSuperoxide dismutase 1 (SOD1)は、機能的に酸化修飾を受けやすい蛋白質であり、酸化SOD1はALSの大多数を占める孤発性ALSの原因の一つと考えられている。これまでの酸化剤を用いた手法は、全ての細胞コンポーネントの酸化を誘導し、目的蛋白質の酸化修飾の影響を解析する事が不可能であった。それに変わる手法として、私は、新たな遺伝子ツールを用い、目的蛋白質である外来性SOD1のみを酸化誘導するシステムをHeLa細胞で構築する事に成功した。この実験系から酸化SOD1の代謝産物の除去にはproteasomeではなくautophagyの活性化が重要である事を示唆する結果を見い出し、同定した2種類の食品成分の効果についての解析に着手した。 神経変性疾患や生活習慣病など疾患において、autophagyの不全と並び小胞体ストレスが主要な原因の一つである。私は共同研究として、小胞体ストレス蛋白質により小胞体シャペロン蛋白質の小胞体内での発現が消失する事、この変化に伴い蛋白質の分泌機構の障害が誘導される事を明らかにし論文発表した。この研究を通じ分泌効率のモニターシステムを構築し、小胞体ストレスを緩和可能な成分を新たに食品成分より新たにスクリーニングした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年申請当初の所属機関から、現在の滋賀医科大学に異動し、使用可能な動物・機器などの研究環境が大幅に変わり、本研究の目的に則した実験系の新たな環境での立ち上げに時間がかかった。また昨年度、(1)抗マラリア薬であるクロロキンによる小胞体ストレス緩和機構、(2)小胞体ストレス蛋白質による細胞病理機構、(3)ALSの原因遺伝子産物であるTAR-DNA binding protein of 43KDa の封入対形成に関わる分子機構、以上3つの本研究の内容に極めて関連の深い研究も同時に進めて、本研究のみに十分な時間を費やす事が出来なかった((2)、(3)は既に論文として発表済みである)。
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今後の研究の推進方策 |
まず、野生型同様に各種病原変異を有するSOD1変異体についても酸化誘導を行い、1)酸化蛋白質およびその代謝産物の発現変動及び細胞内局在の変化、2)ストレス反応により誘導される各種リン酸化レベルの解析、3)ストレス関連遺伝子のreal time PCRによる発現変動の解析、4)野生型と変異型の相違点の解明などを通じ、酸化蛋白質一般及び酸化SOD1による細胞障害機構を明らかにする。また、初代神経細胞やスライス培養を作製し、HeLa細胞で明らかにした酸化誘導後の細胞病態を、本来の目的の神経細胞でも解析を加える。次いで、ここで明らかにされた酸化に伴う各種変化に対する食品成分による効果を検証し、臨床応用可能な成分を絞り込む。ここでは私がこれまで新規に同定した2種類の成分にこだわらず、報告済みの成分に関しても解析を加える。ここで絞り込まれた成分については、Alzet pumpを使用して、変異SOD1を発現する家族性ALSモデル動物に投与して、その効果を細胞レベルでの効果と比較する。 ALSと並びAlzheimer病やParkinson病などの孤発性神経疾患や多くの代謝性疾患、生活習慣病の原因に蛋白質の酸化修飾が示唆されているが、動物個体を用いて研究を進めるツールが確立されていない。そこで、これまでに確立した標的蛋白質特異的酸化誘導システムをマウス体内で可能にするシステム構築に関わる基礎的研究に着手する。具体的には、HeLa細胞で確立した酸化誘導系をin utero electroporationを駆使しマウス胎仔大脳皮質及び脊髄運動ニューロンで再構築し、動物の個体としての酸化誘導の方法論を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、HeLa細胞で確立した酸化誘導実験系を、初代神経細胞や動物個体に拡げる目的で、ニューロンへの遺伝子導入効率が極めて高く、in utero electroporationも可能な遺伝子導入装置の購入に研究費のかなりの部分を費やす。残りの研究費は、分子生物学的解析試薬や、免疫組織関連試薬の購入に充てる。
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