研究課題/領域番号 |
23580418
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
岡田 啓司 岩手大学, 農学部, 准教授 (60233326)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 子牛 / 第四胃 / カード形成 / 移行免疫 / 超音波検査 / 初乳給与技術 |
研究概要 |
新生子牛が健康に育つためには、初乳から免疫抗体を効率的に吸収することが重要である。それには摂取した初乳を胃の中で固めて消化するという哺乳子牛特有のカード形成機構が関与する可能性が考えられてきたが、初乳がカード形成することを証明した報告はなく、またカード形成能力に個体差があることを示唆する報告もあり、その詳細は未解明であった。そこで本研究では、まず子牛の第四胃における初乳のカード形成状態を、エコーを用いて詳細に解析しながら、抗体の吸収量との関係を解明することを目的とした。出生直後で初乳未摂取のホルスタイン種子牛5頭を大学構内に搬入し、全頭に体重の4%量の凍結プール初乳を、生後5時間以内に自力哺乳させた。初乳哺乳2時間後に第四胃のエコー検査を行い、初乳哺乳直前、12、24、36、48時間後に採血し、血中抗体量を測定した。その結果、エコー像から5頭全頭の第四胃で初乳がカード形成していることが認められた。また全頭で初乳哺乳24時間後までに、健康維持に必要とされている抗体量(IgG10mg/ml)を吸収していることが明らかになった。以上から、体重の4%量の初乳を、生後5時間以内に自力哺乳した場合、初乳は第四胃でカード形成し、また充分な抗体量を24時間までに確保できることが証明できた。今後は、臨床試験として、初乳未摂取の新生子牛30頭を農家から借り上げ、哺乳欲が発現する前に初乳の強制投与を行う群15頭と、哺乳欲が生じてから自力哺乳させる群15頭に分け、初乳を強制投与した子牛と自力哺乳した子牛の第四胃のカード形成状態と血中抗体量の推移を比較する。本研究で得られる成果は、健康な子牛の育成上、重要な新知見であり、初乳が凝乳し充分な抗体量を吸収できる初乳の給与技術の確立が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で示したとおり、初年度に計画した初乳哺乳子牛における第四胃内カード形成と免疫獲得の関係の基礎試験を完了し、第四胃における初乳の凝乳状態と抗体吸収量の基礎データを得ることができた。現在臨床試験を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、初乳哺乳子牛における第四胃内カード形成と免疫獲得の関係の臨床試験を行う。また初乳哺乳子牛における第四胃内カード形成の人為的コントロールと免疫獲得の試験を実施する。予備試験から、第四胃内カード形成の人為的コントロールは薬物を使用する予定にしているが、もしも完全に第四胃のカード形成の阻害ができない場合には、初乳を事前に酵素処理し、カードとホエーに分離し、そのホエーのみを給与することで、カード形成しない場合の免疫獲得を解析する試験を行う対応策を用意している。これらのデータを元に、新生子牛の初乳給与プログラムを考案し、実証試験を行う予定である。研究費に残額の生じたのは、実験に用いる子牛価格が高騰していて予算オーバーとなりそうであったため、別の実験にも使用することとし、その予算で購入したために、残金が生じた。
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次年度の研究費の使用計画 |
臨床試験を北海道の大規模牛群で行うこととしたため、旅費および人件費が当初計画よりも大幅に増加する。そのほかに免疫検査、生化学検査経費が生じる。そこに残金を充当する。
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