本研究では、新生子牛の初乳からの免疫抗体の吸収と、哺乳子牛特有のカード形成機構の関連性について調べてきた。1年目は、新生子牛に体重の4%量の初乳を生後5時間以内に自力哺乳させた場合、哺乳2時間後には第四胃でカード形成していることが認められ、24時間後に健康維持に必要とされている抗体量(IgG10mg/ml)を吸収していることが明らかにした。2年目は、人為的にカード形成を阻害した初乳を用いてカード形成の有無と免疫物質の取り込みの関係を明らかにすることを目的に実験を実施した。その結果、初乳給与時の子牛の状態により、自力哺乳できる個体と強制的に給与する個体がいたためばらつきが大きく、カード形成の有無では有意な差は認められなかった。そこで3年目は、21頭の新生子牛を用いて、自力で哺乳した17頭と強制的に哺乳した4頭の比較を行った。その結果、自力群では第四胃のカード形成が良好であったのに対し、強制群ではカード形成が不良であった。また初乳哺乳後24時間後の血中IgG濃度は、自力群で20.15±9.36mg/ml、強制群で10.68±5.93mg/mlで、有意な差が認められた。さらにIgGの吸収率が、自力群で18.16%、強制群で11.51%となり、自力群の方が強制群に比べ効率よく免疫抗体を吸収していることが明らかになった。なお初乳からの免疫抗体の吸収には出生から初乳給与までの時間が重要であるが、今回は自力群で160±90分、強制群で131±108分で、有意な差は認められなかった。以上の結果から、出生後2-3時間の範囲であれば、新生子牛の状態が落ち着いてから自力哺乳させることで、良好な第四胃のカード形成を促し、初乳から免疫抗体を効率よく吸収できることが明らかになった。本研究で得られた成果から、健康な子牛の育成に重要な初乳給与上のポイントを明らかにした子牛の育成技術を確立することができた。
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