研究課題/領域番号 |
23580423
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
山口 剛士 鳥取大学, 農学部, 教授 (70210367)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Dermanyssus gallinae / ワクモ / 病原性 / 免疫応答 / ニワトリ / 外部寄生虫 |
研究概要 |
ワクモ(Dermanyssus gallinae)は、鳥類に寄生する吸血性の外部寄生虫で、採卵養鶏場を中心に甚大な被害を与えている。しかし、ワクモの鶏に対する病原性や吸血による鶏への影響についてはほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、1)ワクモが吸血時に宿主体内へと分泌する物質の性状、2)ワクモ寄生の宿主免疫系への影響、3)ワクモの病原体保有状況について解析を行っている。ワクモ寄生鶏には、ワクモ虫体の約52Kda分子に対する抗体応答が共通して認められ、本分子が吸血時にワクモから宿主に分泌されることが推察された。2次元電気泳動で、本分子の等電点が酸性側にあることが示され、イオン交換クロマトグラフィーによる粗精製を行った。次に、ワクモ寄生群と非寄生対照群から経時的に末梢血リンパ球を採取し、免疫関連遺伝子の発現量をリアルタイムPCR法により比較したところ、複数の免疫関連遺伝子に発現量の相違が認められ、ワクモ寄生による宿主免疫への影響が推察された。また、過去にワクモからの検出報告がある、豚丹毒菌、サルモネラ菌および鶏痘ウイルスの他、報告例の無いMycoplama synoviae, M. gallisepticum, マレック病ウイルスおよびアデノウイルスについてワクモからの遺伝子検出を試みたところ、鶏痘ウイルス、M. synoviaeおよびM. gallisepticumの遺伝子が検出された。以上のことから、ワクモ寄生により宿主免疫系が何らかの影響を受けている可能性が示唆された。また、ワクモからMycoplasma遺伝子がはじめて検出され、本菌がワクモにより伝播される可能性が示された。さらに、発生報告件数が僅かな鶏痘の原因ウイルス遺伝子がワクモから多数検出され、本ウイルスが野外に広く分布している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二次元電気泳動による分離で良好な結果が得られず、未だ標的分子の決定には至っていない。また、cDNAライブラリーの免疫学的スクリーニングによっても現時点では陽性クローンが得られず、対象分子の決定には至っていない。その他の事項については概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
対象分子の質量分析を行うため、二次元電気泳動に代えてイオン交換クロマトグラフィーによる粗精製を実施した。対象分子の単離には至っていないが、アフィニティー精製等との組合せにより質量分析等に向けた精製を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
宿主の免疫応答を惹起するワクモ抗原をイオン効果間クロマトグラフィーや鶏抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、質量分析等により分子を特定する。また、質量分析に加えcDNAライブラリーの作成を推進し、対象分子の遺伝子クローニングを行う。また、ワクモ寄生鶏における免疫関連遺伝子の動態解析を進める。さらに、ワクモに各種ウイルスを接種し、ワクモ体内でのウイルス力価の推移を明らかにする。
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