研究課題/領域番号 |
23580425
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
平井 卓哉 宮崎大学, 農学部, 准教授 (60321668)
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研究分担者 |
山口 良二 宮崎大学, 農学部, 教授 (90150169)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 豚 / 豚繁殖・呼吸障害症候群 / 南九州 / ウイルス / 持続感染 / 病理学 |
研究概要 |
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、母豚の繁殖障害や子豚の呼吸器障害などを引き起こすウイルス性疾病である。PRRSの防除対策として、母豚群の抗体価を安定・持続化させ、母豚および子豚の被害を抑える試みがなされているが、優れたワクチンがなく、母豚への持続感染のため清浄化が難しい。また、本ウイルスの遺伝子変異の幅は極めて大きく、全国有数の畜産県である宮崎・鹿児島両県由来ウイルス株は解析されていない。本研究では、母豚群におけるウイルス動態、感染臓器、感染細胞、南九州におけるウイルス株の遺伝子性状を明らかにして、持続感染様式の一端を解明することである。 今年度は母豚群で検出されるウイルス株が流産や子豚の呼吸器病の原因になっているかを明らかにするために、対象農場で発生した流産母豚および胎児におけるウイルス遺伝子の局在などを詳細に解析した。流産母豚においてウイルス遺伝子は唾液、扁桃で検出され、その他の臓器においてPCR陰性を示した。一方、流産胎児においてウイルス遺伝子は肺と胎盤で検出された。シークエンス解析の結果、母豚の扁桃で検出されたPRRSウイルスORF5遺伝子の塩基配列は流産胎児のそれと100%の相同性を示した。また、子豚の肺炎材料より、同じウイルス株が検出された。以上の成績より、母豚群で検出されたウイルス株が流産や子豚の呼吸器病の原因になっていることが明らかになった。さらに、母豚の唾液でウイルスが検出されたことから、持続感染豚における唾液検査の有用性が示唆された。豚においてロープを用いた唾液採取法が報告されている。妊娠母豚において血液採取時期は限定されるのに対し、ロープを用いた唾液採取法はどの妊娠ステージにおいても採取可能であり、豚にストレスを与えないメリットがある。現在、母豚血清および唾液の経時的調査を実施し、ウイルス感染状況やELISA抗体価の推移を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度計画していた母豚血清の経時的調査および流産胎児や子豚の呼吸器病の調査は、概ね達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の検査に加え、持続感染豚における感染臓器や感染細胞を明らかにする目的で、母豚の各種臓器を用いてISHタイラミド増感法を実施する。さらに、南九州におけるウイルス株の遺伝子性状を明らかにする目的で、宮崎県の各食肉衛生検査所などで廃豚や子豚のウイルス遺伝子の解析を実施する。1)宮崎県および鹿児島県のPRRS陽性農場における母豚の解析。(1)母豚血清の経時的調査。前年と同様に実施する。検査対象母豚として、高い抗体価を示した症例、血清中のPCRが陽性になった症例、流産歴のある症例、哺乳子豚がPCR陽性となった母豚を追加する。(2)流産胎児や子豚の呼吸器病の調査。前年と同様に実施する。(3)廃豚(母豚)の調査。廃豚の検査は農場における上記(1)(2)の検査結果を踏まえ、高い抗体価を示した症例、血清中のPCRが陽性になった症例、流産歴のある症例、哺乳子豚がPCR陽性となった母豚を中心に行う。廃用時に血清や各種臓器を採材し、病理検査、タイラマイドISH増感法、Real-time RT-PCR法を行う。これらにより、感染臓器、持続感染細胞ならびに各種臓器中のウイルス量を明らかにする。また、シークエンス解析を行い、ウイルス株の特徴を明らかにする。2)その他の廃豚および子豚の調査。宮崎県の各食肉衛生検査所などにおいて廃豚や子豚の臓器を農場ごとに採材し検査する。廃豚や出荷豚の検査は主に宮崎県を中心とした南九州のウイルス株の遺伝子性状を幅広く調べることを目的とする。すなわち、PCR法で陽性になった症例についてシークエンス解析を行い、ウイルス株の遺伝子性状を明らかにする。3)南九州におけるウイルス流行株の解析。上記のシークエンス解析をもとに、南九州におけるウイルス流行株の特徴を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品としては、病理研究用試薬類、分子生物学用試薬類、ガラス器具・容器類を購入予定である。第154日本獣医学会学術集会にて成果発表を予定しており、その旅費が必要である。その他の費用として、印刷費、研究成果投稿、実験廃棄物処理費を予定している。
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