豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)対策で最も大事なポイントは、「繁殖母豚から子豚への感染を抑えること」である。したがって、繁殖候補雌豚の適切な馴致が重要である。本研究では、繁殖母豚または繁殖候補雌豚におけるウイルス動態、感染臓器、南九州におけるウイルス株の遺伝子性状を明らかにすることである。 母豚においてPRRSウイルスは扁桃で増殖するが、ウイルス量は高くないため、in situ hybridization(ISH)増感法を開発した。今回、免疫組織化学的検査法、ISH通常法、我々の開発したISH増感法を比較検討し、増感法の感度が非常に高く、非特異反応が少ないことを証明した。加えて、固定液や固定時間を検討したところ、4%パラホルムアルデヒド固定液で2週間以内の固定時間が良好であることを明らかにした。本研究では、母豚において扁桃がPRRSウイルスの増殖の場として重要であることを我々の開発したISH増感法で明らかにした。口腔液中で検出されるPRRSVの主な局在部位は口蓋扁桃であることが示唆された。本検査の有用性を確認するために、対象農場において導入したPRRSウイルスフリーの繁殖候補雌豚から経時的に口腔液を検査してウイルス動態を調べた。その結果、PRRSウイルスは導入後3週で口腔液より検出され、導入後11週で検出されなくなった。頻回の血液採取は動物にとって大変ストレスがかかるが、口腔液採取は容易であることより、今後、農場内における繁殖母豚または繁殖候補雌豚におけるウイルス動態の調査に大変有用であると考えられた。日本で検出されるPRRSウイルスは5つのクラスターに分類されるが、本研究で行った調査ではクラスターⅠ、Ⅱ、Ⅳ型のウイルス株が検出された。特にある地域においてはクラスターⅣに分類されるウイルス株が多い傾向にあり、今後さらに症例数を増やして検討する必要がある。
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