研究課題/領域番号 |
23580426
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
中馬 猛久 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (90201631)
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研究分担者 |
岡本 嘉六 鹿児島大学, 農学部, 教授 (00136847)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | サルモネラ / 抗菌剤耐性 / ブロイラー |
研究概要 |
Salmonella Infantisは我が国の主要な食中毒原因菌であり、本菌の抗菌剤耐性化、とくに基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌の出現および伝播は公衆衛生上大きな問題である。本研究ではブロイラー由来S.Infantisの薬剤耐性、保有プラスミド、耐性遺伝子を調査し、さらに分離株をドナーとしてプラスミド伝達試験を行い、個々のプラスミドの耐性遺伝子を調べた。2009年9月から2010年1月にかけて1農場から分離された鶏由来S.Infantis全17株を用いた。薬剤感受性試験は、簡易法としてKB-DISCによりDISC拡散法で12薬剤について調べた。さらに最少発育阻止濃度(MIC)は寒天平板希釈法を用いて、アンピシリン(AMP)、セフォタキシム(CTX)、ストレプトマイシン(SM)、カナマイシン(KM)、テトラサイクリン(TET)、スルファメトキサゾール(SUL)の6薬剤を測定した。耐性遺伝子の検出にはPCR法、プラスミドの抽出には関崎の変法、プラスミド伝達試験にはE.coli DH5αを用いた接合法を行った。さらに菌株間の近似性を求めるためPFGEを行った。全17株のうち4株がセフォタキシム(CTX)耐性のESBL産生菌であった。CTX耐性S.Infantisの含む約95kbpプラスミドにはAMP・CTX耐性を担うCTX-M-14耐性遺伝子があり、約140kbpプラスミドにはSUL・SM・TET・KM耐性をそれぞれ担うsul1・aadA1・tetA・aphA1耐性遺伝子があった。日本のブロイラーに対して第三世代セフェム系薬が使用されていないにも関わらずこのようなCTX耐性S.Infantisが分離されたことは、耐性伝播にプラスミドが関係していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
鹿児島県下のブロイラーからの薬剤耐性サルモネラ菌株の収集も当初予定していたとおり順調に進行している。加えて、他の機関との情報交換により、当初の予定以上の薬剤耐性サルモネラ菌株を入手することができ、この菌株を解析に用いたところ、我が国のブロイラーにおける新規な薬剤耐性遺伝子をプラスミド上に検出することができたことが大きな収穫となった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の方法を継続し、菌株の収集を続けデータを蓄積する。鹿児島県下の農場から食鳥処理場に持ち込まれるブロイラーの盲腸を収集(年間約50鶏群各16羽、合計総数約800サンプルを予定)、増菌培地および選択培地を用いてコロニーを分離し、生化学的性状検査により菌種を同定後、特異抗血清を用いて血清型別を実施する。多検体処理に対応した寒天平板希釈法を用いて、動物およびヒトで臨床上重要な抗菌剤の分離菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)を測定することにより感受性を試験する。サルモネラの薬剤耐性にはそれに対応する複数の耐性遺伝子がわかっているので、各々の耐性に関与する様々な遺伝子に特異的プライマーを用いたPCR法によって検索する。初年度のPCR法による検索を継続しながら、耐性遺伝子内の塩基配列変異により耐性が拡張することがわかっているもの(例えばTEM型βラクタマーゼなど)についてはダイレクトPCRシークエンス法により配列を決め、耐性遺伝子の種類を特定する。試験管内接合法により、薬剤耐性サルモネラから他の受容菌への薬剤耐性の移動による伝達能を試験する。伝達を媒介したプラスミド遺伝子をアルカリ溶解法にて抽出し、PCR法により伝達した耐性遺伝子を特定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度も継続して年間約800検体からの細菌分離・同定・血清型別、感受性試験、耐性遺伝子検出のための培地類、試薬類、各種抗菌剤、核酸・酵素類が必要となる。また、病原微生物を取り扱うためのディスポーザブルのプラスチック器具(シャーレ、試験管、チップ、注射筒など)および試薬調整のためのガラス器具も必須となり、収集された菌株について耐性伝達試験などが加わるため遺伝子解析に関する実験が上乗せされるので、試薬類、核酸・酵素類、プラスチック消耗品を前年度より多く計上してある。 本研究遂行に当たり薬剤耐性因子および耐性菌の国際的な動向を知り情報交換を行なうため、本研究中途における成果の国際学会での発表を計画に盛り込み、旅費を計上している。
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