研究課題/領域番号 |
23580426
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
中馬 猛久 鹿児島大学, 獣医学部, 教授 (90201631)
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研究分担者 |
岡本 嘉六 鹿児島大学, 獣医学部, 教授 (00136847)
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キーワード | サルモネラ / 抗菌剤耐性 / ブロイラー |
研究概要 |
S. Infantisは我が国のブロイラー由来サルモネラの優勢な血清型であり、人のサルモネラ食中毒を引き起こす血清型の上位を占めている。近年本菌のβラクタム薬耐性が報告され、その拡大が危惧されている。そこで本研究では南日本におけるブロイラー由来S. Infantisの薬剤感受性を調べ、βラクタマーゼ遺伝子の検討を行った。92鶏群1472の鶏盲腸検体から分離されたS. Infantisを用い薬剤感受性試験、ダブルディスク試験、耐性遺伝子のPCRによる検出とシークエンス、プラスミドプロファイルの解析を行った。 分離された93株のうちアンピシリン、セフォタキシムの両剤に耐性を示したのは33株(35.5%)でblaTEM52、blaTEM20型ESBL産生株がそれぞれ22株、1株認められ、以前の報告と比較して著しく増加していた。blaTEM52保有株1株はblaCTX-M25にも同時に陽性を示した。AmpC産生を示した株は8株すべてでblaCMY2陽性であった。ESBL産生株では約50kb、180kbの、AmpC産生株では約180kbのプラスミドが検出され、両者の間で保有するプラスミドの相違が認められた。blaCTX-M25は約125kbのプラスミドが関連していた。 ブロイラーにおけるblaTEM52型ESBL産生S. Infantisの広範囲な拡大が認められた。さらにblaCMY2、blaCTX-M25保有S. Infantis株も新たに出現した。これらのβラクタマーゼ遺伝子はプラスミドと関連していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
鹿児島県下のロイラーからの薬剤耐性サルモネラ菌株の収集は当初予定したとおり順調に進行している。薬剤感受性試験、耐性遺伝子の検索およびそれらのシークエンスも計画通り達成できた。その結果、予想されたβラクタマーゼ耐性遺伝子以外の新規な薬剤耐性遺伝子も検出でき、それを過去にさかのぼって検索する研究も加わり予想以上に成果が上がっている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度からのサルモネラ菌株の収集を継続し、さらなるデータの蓄積を目指す。鹿児島県下の農場から職長処理場に持ち込まれるブロイラーの盲腸を収集(年間約50鶏群各16羽、合計総数約800サンプルを予定)、増菌培地および選択培地を用いてコロニーを分離し、生化学的性状検査により菌種を同定後、特異抗血清を用いて血清型別を実施する。多検体処理に対応した寒天平板希釈法を用いて、サルモネラの薬剤感受性試験を実施する。各々の薬剤耐性に関与する様々な遺伝子を、特異的なプライマーを用いたPCR法によって検索する。耐性遺伝子内の塩基配列の変異を特定するためダイレクトPCRシークエンスを行う。さらにプラスミドの抽出を行い、薬剤耐性との関連を調べる。試験管内接合法により細菌から細菌へのプラスミドの移動による薬剤耐性の伝達を調べる。また、エレクトロポレーション法により薬剤耐性に関与する遺伝子を特定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度も継続して年間800検体からの細菌の分離・同定・血清型別、抗菌剤感受性試験、耐性遺伝子検出のため培地類、試薬類、各種抗菌剤、核酸、酵素などが必要となる。また、微生物を取り扱うためのディスポーザブルのプラスチック類(シャーレ、試験管、チップ、注射筒など)および試薬調整のためのガラス器具も必須である。プラスミド伝達試験やエレクトロポレーションなどに用いる遺伝子解析のための試薬や専用キュベットなどのプラスチック消耗品の使用も加わる。さらに最終的な結果のとりまとめの論文作成と雑誌への投稿として成果発表の経費を計上する。
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