研究課題
最終年度は、野生動物由来HEVの家畜への伝播の可能性を中心に検討した。シカ由来HEVの家畜(ブタ)への感染伝播:HEV陽性であったエゾシカ肝臓組織を4頭のミニ豚(10週齡)に経口投与(約30g)して、ブタ糞便中ウイルスの検出を行った。摂取3週後に糞便中からウイルス排出が確認されシカから豚に感染伝播することが明らかとなった。その後、経過を追って排泄状況を確認したところ、感染後50日からウイルス排泄が消失した。血清中のウイルス検出は、50日後に一過性に確認された。感染80日後に剖検した個体の肝臓からHEV-RNAが検出されシカ由来のHEVがブタに経口感染することが示された。ウイルス分離:エゾシカ糞便サンプルからA549細胞を用いてウイルス分離を試み、持続的に感染する細胞を得た。ORF1領域の一部配列を確認したところ3型と相同性が高い事が示された。今後は、分離ウイルスの詳細な性状解析を進める予定である。ヒトへの感染リスク検討(エゾシカにおける寄生虫感染との関係性):HEV検査と並行して寄生虫検査を実施して、肝炎とカンテツとのヒトへの感染リスクを検討した。その結果、一般線虫卵の寄生率は95%、日本産肝蛭の寄生率は9.5%であった。HEVの感染率と比較して低率であった事から、当該調査地域のエゾシカに関しては、ヒトへの感染リスクとしてHEVが高い事が示された。結論:エゾシカに感染しているHEVは、感染性を有し家畜(ブタ)に感染するウイルス株であることが明らかとなった。また、糞便からウイルス分離可能であったことから感染性ウイルスが糞便中に排泄され、個体間の感染源になる可能性が示唆された。これらの知見は、人における肝炎との比較研究を進める必要がある。ヒトへの感染リスクについては、肝臓中のウイルスコピー数が100コピー以下の個体が大半を占めることから、大量に生の肝臓を喫食しない限り感染リスクは低いものと考えられる。
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北海道獣医師会雑誌
巻: 58 ページ: 44-47
Environment and Pollution
巻: 3(1) ページ: 1-20
doi:10.5539/ep.v3n1p1