研究課題/領域番号 |
23580428
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
壁谷 英則 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (10318389)
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研究分担者 |
丸山 総一 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (30181829)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 人獣共通感染症 / リケッチア / 獣医学 / ベクター / 微生物 / バルトネラ / ネコノミ |
研究概要 |
平成23年度は、動物保護センターならびに全国から6カ所の動物病院協力を得て、保護動物に寄生する吸血性節足動物、ならびにそれらの糞便を収集した。それぞれ猫68頭、犬82頭から採取した血液117検体、ノミ55プール(1-5匹を1プールとした。)、ノミ糞35検体、およびダニ28検体を採取した。各検体からDNAを抽出し、Rickettsia属のクエン酸合成酵素(gltA)を標的としたPCRを行った。さらには、同じネコノミから検出されるバルトネラ属菌についても併せて検討し、同属の細胞分裂関連遺伝子(ftsZ)を標的としたPCRを行った。得られたPCR産物についてはDNAシークエンスにより塩基配列を決定し、菌種の同定を行った。その結果、Rickettsia felis DNAは、検討した血液、ノミ、およびダニからはいずれも検出されなかったが、いずれも猫から採取したノミ糞の4検体(4/22:18.2%)から検出された。一方、Bartonella属菌DNAについては、猫から採取した血液(50検体)、ノミ(37検体)、ノミ糞(22検体)のうち、Bartonella henselae DNAが、それぞれ1検体(2.0%)、ノミ3検体(8.1%)、ノミ糞1検体(4.6%)から、B. clarridgeiae DNAはそれぞれ0検体(0%)4検体(10.8%)、ノミ糞6検体(27.3%)からそれぞれ検出された。一方、犬から採取した検体では、ノミ2検体(2/18:11.1%)からB. henselae DNAが、ノミ糞1検体(1/13: 7.7%)B. clarridgeiae DNAからそれぞれ検出され、それ以外の検体からは検出されなかった。平成23年度に検討した材料で、R. felis DNA陽性を示した検体はいずれもノミ糞であったため、Rickettsiaの分離培養は実施していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究目的に比べ、遅れている点としては、(1)検体収集、と(2)Rickettsia分離培養が挙げられる。検体の収集については、おおむね計画の通り進んでいるが、計画では全国的なRickettia felisの分布状況について検討することを目的としていたが、これまでのところ、多くが関東近辺から検体を収集している。平成24年度以降は、関東以外の地域からの検体採取をする必要がある。一方、(2)Rickettsia分離培養については、これまで検討した検体のうち、Rickettsia felis DNAが検出されたものはいずれもノミ糞便であったため、分離培養に使用することができなかった。今後より多くの検体について検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後検体収集については、特に関東以外の地域からの採取に重点を置く。関連する動物保護センターへの依頼箇所を広げる必要がある。Rickettsiaの分離培養については、ノミ、ダニ、血液など、無菌的に採取できる検体、ならびに検体表面を消毒することができるもののみ、検討することができるため、今後、検討する検体数を増やし、これらの材料からのRickettsia felis DNA陽性検体がえられるかどうか、続けて検討する。さらに、平成23年度の検討により、Rickettsia陽性検体数はあまり多くないことから、Rickettsiaに加え、同じネコノミによって媒介される人獣共通感染症の起因菌であるBartonella属菌についても検討を続ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の本研究遂行に必要な経費は以下の通りである。(1)材料採取のための容器・送料、(2)遺伝子検索のための、DNA抽出、PCRならびにシークエンス試薬、(3)分離培養・血清診断のための細胞培養等の試薬、および(4)研究成果の発表に関する経費を予定している。
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