研究課題/領域番号 |
23580430
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
小林 眞理子(望月眞理子) 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (50409257)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
1)試料採取の状況:本研究においては、各種試料の入手が研究を進展させる上で重要なポイントとなると考えられる。従って、平成24年度は、試料の採取のために、試料入手先の模索と試料提供者との打ち合わせを中心に試料収集の仕事を進めた。現在までに、ウマに関しては約70頭分の血清、サルに関しては、約50頭分の体毛試料を入手している。現在までに、試料採取に至っていない案件もあるが、これらは25年度に試料の入手が可能となると考えている。 2)具体的な研究内容 2-1)健康指標の作成:上記で採取した試料の内、ウマの血清を用いて、ヨウ素(I)とサイロキシンン(T4)濃度を測定した。海藻を含む餌を多給され、甲状腺の腫大が観察されたウマに関しても同様の検討を行い、IとT4濃度の関係が、餌由来のI過剰の有無を判断する指標となることを示唆した(第155回獣医学会で発表、現在投稿中)。この指標は、24時間採取尿を用いることなく対象動物におけるIの過不足を判断できる可能性を持ち、動物にとどまらずヒトにおいても有用な判断基準となる可能性がある。 2-2)環境指標の作成:動物の体毛は、非侵襲的に得ることができることから、動物愛護の観点からも重要な試料の一つである。本年度は、過去に分析をした試料を再検討し論文としてまとめた(Bull Envirom Contam Toxicol、下記業績参照)。同時に日本各地から入手したサルの体毛を前処理し分析を行う準備をしている。 2-3)その他:2-3-1)前年度に申請したミトコンドリアDNA分析による動物集団のグループ分けに関して、DNAの回収方法に関して時間がかかってしまったが、後半おいてその手法が確立しつつあり、25年度にはなんらかの結果を出し、環境汚染を把握するための新な指標作成に利用したい。2-3-2)現在、何らかの疾患に罹患したウマの血清を入手おり、解析をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)試料の採集:供給される試料の種類、数が大変充実してきている。ウマ、ウシなどの動物から人間に関するものまで、多種多様な種に由来する種々な種類の試料の入手、あるいは入手予定があることから、今後も試料採取が順調に進むことが考えられる。 2)研究:上記、<研究実績の概要>に記載したように、順調に進展している。従って、以下の3)にあげるように研究成果の発表も順調に行うことができている。 3)研究成果の発表に関して:国際誌への投稿に関しては、環境に関するもの2題が受理されている。他の2題に関しても、本申請以外の研究ではあるが、深く関係する内容のものである。これらに関する実験あるいは論文作成においては、中心となり役割を果たすことができた。また、学会発表に関しては環境のモニタリングに関するもの1題、健康指標に関係するもの1題を第155回獣医学会で発表した。また、この学会では、今後本研究とも関係する分析方法の検討に関して指導的な役割を果たし、学会発表の共同研究者として発表を行った。現在、学会発表を行ったウマの研究を含め、国際誌への投稿を終了し査読を受けている最中の論文が3報ある他、2報が投稿準備中である。 以上のような状況から、研究および研究成果の発表に関しては、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)試料採取:各種試料の採取を継続して行う。新たな種類の試料を入手できる期待が高い(一部は入手済)。 2)<今後の研究の進展1>:ウマの研究においては、T4と元素を組み合わせて得られた新たな指標の開発に成功した。上記の試料に関して、元素分析だけではなく、様々な研究手法および検査(例えばDNA解析、病理組織解析、一般臨床検査)を行い、元素の成績と合わせて検討することで、新たな健康および環境汚染の指標を提案していきたい。<今後の研究の進展2>:解析が終了したウマの試料(学会発表使用分)などでは、血清の採取と同時にたてがみ、蹄をサンプリングしている。これらを分析し、血清より得られた成績と矛盾しない傾向が得られれば、非侵襲的にウマの健康に関する状態を把握することができると考えられる。しかし、毛や蹄の多元素分析は干渉の問題が大きく、本年度は分析精度に関する基礎的な研究を行う。<今後の研究の進展3>:ウマの血清分析の過程において、一般臨床検査で検査結果が得られるような元素が、ヨウ素と同じような動きをしていることを把握している。特殊な装置を使用せずに一般的な臨床検査項目で成績が得られるならば、臨床現場の獣医師にとって非常に役立つ指標を開発できると考えられる。現在、その詳細な解析に着手しており、投稿の準備をしている。 3)成果発表:引き続き、積極的に学会発表を行う。また現在、投稿しているものあるいは、投稿準備中のものに関して、受理に向けて努力していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)引き続いて分析を行う上で必要となる物品費、サンプリングに行くときの交通費などに使用予定である。2)一部の研究において、DNA解析と環境汚染の組み合わせにより新たな環境指標の作成が可能となりそうで、この研究においては、研究補者への謝金を用いる。 3)他方、3年目に入り順調に学会・研究会報告および論文投稿が進んでいる。従って、英文校閲代金、投稿料、学会参加費、交通費などへ使用をする。 昨年度からの繰り越し金も、上記の研究に引き続き使用させていただきたい。
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