研究課題
野生水禽および家禽類から分離される鳥インフルエンザウイルスが、異なる宿主に対して、異なる感染性、増殖性を示すメカニズムを解析することを目的として、野生水禽から分離されたH3N8亜型ウイルス株と、鶏から分離されたH3N8亜型ウイルス株を用いて、生物性状の比較解析を行うことにより、それらのメカニズムを解明する。 本年度は、鶏から分離されたH3N8亜型ウイルス株と、水禽から分離されたH3N8亜型ウイルス株のそれぞれの株の全ての遺伝子分節についてクローニングを行ったプラスミドのウイルス遺伝子について全塩基配列の決定を行い、ウイルスと塩基配列に相違がなく、変異が導入されていないことを確認した。 また、これらの作成したプラスミドを、293T細胞に遺伝子導入することによりウイルスタンパク質を細胞中で発現することを確認した。さらに、既に明らかになっているHA上の鶏から分離されたH3N8亜型ウイルス株と、水禽から分離されたH3N8亜型ウイルス株の相違部位について、ポイントミューテーション法により、変異を導入した遺伝子分節を作製した。 今後、これらのブラスミドを用いて、鶏由来ウイルスと水禽由来ウイルスの遺伝子分節を入れ替えた遺伝子再集合体を作出し、異なる細胞での増殖性やアイガモとニワトリを用いた感染実験による感染比較を行う事が可能となり、どの遺伝子分節が感染性や増殖性に影響を与えているかを解析することが可能となった。
3: やや遅れている
遺伝子の改変等については、学内組換えDNA実験委員会において承認が得ているが、人工ウイルスの作出は、組換えDNA実験委員会および大臣承認が必要であり、その承認が得られないため。
今後は、組換えDNA実験委員会および大臣承認を得た上で、これらのクローニングしたプラスミドを用い、水生家禽から分離されたH3N8亜型ウイルス株を基に遺伝子分節を1本ずつ鶏から分離されたH3N8亜型ウイルス株のものと入れ替えた遺伝子再集合体を作出し、これらの遺伝子再集合体をアイガモとニワトリを用いた感染実験を行い、感染性、各種臓器での増殖性の比較を行い、どの遺伝子分節がニワトリでの感染性および増殖性に関わるのかを検証する。 明らかにされた遺伝子分節上の原因となる領域を明確するため、遺伝子解析により決定された水禽分離株と家禽分離株の遺伝子配列上で異なる領域をキメラ遺伝子またはポイントミューテーションにより変異を導入した遺伝子分節を作製し、アイガモとニワトリを用いた感染実験を行い、家禽類での感染性および増殖性に関わるウイルスタンパク機能部位を明らかにする。 決定されたウイルス側蛋白の機能部位と相互作用する宿主側因子を明らかにするため、ポイントミューテションを入れた人工ウイルスを用いて、アイガモとニワトリで感染実験を行い、各種臓器サンプルを採取し、ウイルス抗原が検出される臓器の分布状況から、ウイルスを反応する宿主側因子の検索を行う。予測される宿主蛋白との蛍光抗体による二重染色や免疫沈降法を用いて、ウイルス蛋白と相互作用する宿主因子の同定を行う。
次年度の研究費の使用計画は、当初の計画と概ね変わりなく、消耗品を購入に当てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Preventive Veterinary Medicine
巻: 103 ページ: 192-200
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Virus Research
巻: 163 ページ: 448-453
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