野生水禽および家禽類から分離された鳥インフルエンザウイルスが、異なる宿主に対して、異なる感染性および増殖性を示すメカニズムを解析することを目的として、ニワトリとアヒルから分離されたH3N8亜型ウイルス株の比較を行った。ニワトリとアヒルから分離された2株の全塩基配列を決定し、2株間には全体で67か所のアミノ酸に違いが存在することが判明した。その違いの多くは、HA、M2、NSに存在し、これらの蛋白質が、感染性、増殖性に関与すると考えられた。さらに、これらのウイルス蛋白のうちいずれが重要であるかを解析するため、2株の遺伝子分節をそれぞれ全て発現プラスミドにクローニングし、293T細胞において、全てのウイルス蛋白が発現することを確認した。しかし、アヒルのPB1遺伝子をクローニングしたプラスミドはRNAポリメラーゼ複合体を形成させると機能しないことが判明した。そのためRNAポリメラーゼ複合体を形成に関与するPB2、PB1、PA、NP遺伝子はPR8株から再クローニングを行い、また、感染性および増殖性に重要であると考えられるHAについては、ニワトリとアヒルの一部を交換したキメラを作成し、これらが正常に発現、機能することを確認している。今後、これらのブラスミドを用いて、鶏と水禽の遺伝子をそれぞれ組み換えた遺伝子再集合体、およびキメラウイルスを作出し、アイガモとニワトリを用いた感染実験を行い、その感染性および増殖性を詳細に比較して、感染性および増殖性を実証する予定である。
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