研究課題/領域番号 |
23580433
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研究機関 | 北海道立衛生研究所 |
研究代表者 |
八木 欣平 北海道立衛生研究所, 感染症部, 主幹(医動物グループ) (70414323)
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研究分担者 |
奥 祐三郎 鳥取大学, 農学部, 教授 (60133716)
松本 淳 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (70296169)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エキノコックス / ワクチン / 人獣共通感染症 / 多包虫症 / 寄生虫 |
研究概要 |
エキノコックス症は、本邦に常在する有効な治療薬のない致死的な寄生虫性疾患である。本症は、我が国で感染の可能性がある動物由来感染症のリスクプロファイリングの結果、高リスク感染症として上位(104 中4 番目)にランクされている(吉川ら、2009)。北海道では年間15-20 名の新規ヒト患者が報告される状況が続き、野生のキツネの40%がエキノコックスに感染しており、住民は現在も感染の脅威にさらされている。しかしながら、本症に対する有効な対策を講じる上で必要な学術的検討は、安全に実験を行う施設が限られていることなどの理由から、十分に遂行されていない。 これまでの研究により我々は、イヌへの実験感染によって得られた成虫より、cDNA ライブラリを作成し、中間宿主に有効なワクチン候補蛋白の探索を行い、新規蛋白質EMY162およびtetraspanin蛋白による免疫が、感染防御として有効に働くことを明らかにした。当該年度の研究では、さらにこのtetraspanin蛋白を用いて、鼻腔への粘膜免疫をおこない、その有効性を明らかにすることが出来た(論文1)。このことにより、本研究課題の目標の一部を達成できたものと考えている。また、中間宿主ワクチンについては、その適用にあたり、数々の制限が予測されるが、我々は宿主側の遺伝的な違いが感受性に影響を与えているという研究の結果を展開し、感受性の優れた近交系マウスと感受性の劣る近交系マウスを利用し、バッククロスによる遺伝的に多様なマウスを作成し、どの遺伝子領域が感受性および、幼虫の発育(原頭節の形成)に強く影響を与えているのかを検討し、有用な情報を得ることが出来た(論文2)。このことは、将来のワクチンを用いたコントロール戦略に重要な情報を提供する。現在終宿主動物へのワクチンに関する実験を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度予定されていた粘膜免疫の実験が終了し、その成果を報告することが出来た。また、宿主の感受性に関する遺伝子の関与を明らかにする研究を遂行し、有用性の高い情報を得ることが出来た。効果的なコントロールプログラムの作成におけるワクチン戦略を進める上で、遺伝的ハイリスクグループの探索は、必要不可欠なものである。終宿主に関する実験についても遂行中であり、良好な結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度については、終宿主ワクチンの実験を遂行すると共に、新規抗原EMY162についても、粘膜免疫を誘導する実験の遂行を予定している。助成金の配当の調整があったため、平成23年度の実験計画を若干変更した。その結果、年度をまたがる感染実験計画を遂行することになった。このため、物品費の20万円程度が、繰り越されることとなった。平成24年度は、それを加えた研究費を利用して研究を遂行する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度についても、終宿主(ビーグル他)及び中間宿主動物(近交系マウス他)を購入し、エキノコックス感染実験を行う。また、マウスにおける感染時の遺伝子発現についての検討し、有効なワクチン適用についての検討を行う。
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