研究課題/領域番号 |
23580436
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
滝口 満喜 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (70261336)
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研究分担者 |
山崎 真大 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (40322846)
大田 寛 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (50431333)
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キーワード | 超音波診断 / 造影超音波検査 / 膵臓 / 犬 / 膵炎 / ソナゾイド |
研究概要 |
本研究の目的は、伴侶動物における超音波検査による客観的病態診断の確立に向けた基盤を形成し、その臨床応用の進展を検討することである。平成24年度は昨年に引き続き、ソナゾイド造影超音波検査の臨床応用の適用拡大を目的として、未だに診断が困難な膵炎に着目し、まず正常犬の膵臓の灌流状態に関する基礎的知見を得た。次いで、実験的に作出したセルレイン誘発性急性膵炎モデルにおける造影超音波検査所見を解析して、膵臓の血流変化に着目した急性膵炎の新しい診断基準を確立することを目指した。 その結果、超音波造影剤ソナゾイドのボーラス投与(0.01ml/kg)では膵臓の至適観察時間が16秒と短かったため、ソナゾイドを0.05 ml/kgで持続点滴することで観察時間を150秒に大幅に延長させる造影検査法を確立した。本研究成果はVeterinay Radiology and Ultrasound誌に投稿済みで、現在2度目の査読中である。また、セルレイン誘発浮腫性膵炎では、正常時に比べて膵実質のエコー輝度のピークまでの到達時間が短縮し、最高輝度が上昇することが明らかとなった。本研究成果はAmerican Journal of Veterinary Research (AJVR) 誌に投稿中である。 これまでソナゾイドを用いた犬の膵臓の造影超音波検査に関する報告は皆無であり、本研究成果によって、犬の膵臓の造影超音波検査法が確立され、実験的に作出した浮腫性膵炎における膵臓の灌流状態の変化の特徴が明らかになったことは、現在進行中の膵炎の臨床例での解析に向けてその礎を築くことができた。 加えて、今年度は左心房機能に着目した心エコー図検査による新たな心機能評価法の確立を目指し、正常犬の左心房面積の時相による変化を解析して正常値を確立するとともに、本手法の再現性を明らかにした。本研究成果はAJVR誌に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は実験動物を用いた解析と臨床例における検討の大きく二つの領域から構成される。 当初の研究実施計画において、平成24年度はソナゾイド造影超音波検査の臨床応用の適用拡大を目的として、未だに診断が困難な膵炎に着目し、実験的に作出した急性膵炎モデルにおける造影超音波検査所見を解析して膵臓の血流変化に着目した診断基準を確立することを目指していた。この意味において、ビーグル犬を用いた実験的急性膵炎モデルでの解析は終了し、研究はおおむね順調に進展していると判断している。また、左心房機能に着目した心エコー図検査による新たな心機能評価法の確立に向けた研究を展開し、今後の臨床例での解析の基礎となる正常犬のデータを確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、これまでの実験で得られた基礎的データを基に、臨床例での解析をすすめる予定である。具体的には動物病院に来院する膵炎を含む様々な疾患の症例に造影超音波検査を適用し、画像情報を集積することで疾患特異的な画像所見の発見につとめたい。また、左心房機能に着目した心エコー図検査についても、様々な心疾患症例に適用することで、その臨床的有用性を明らかにしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は配分経費のうち1,352円の残額が生じた。この次年度使用となった研究費については、物品費としてすでに使用済みだが支払いが翌年度となった。
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