研究課題/領域番号 |
23580437
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
都築 圭子 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30364251)
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キーワード | 角膜再生 |
研究概要 |
平成24年度はコラーゲンゲルおよび、温度応答性培養皿を用いた上での犬角膜上皮幹細胞シートの作製を試み、前年度に作製した犬羊膜上角膜上皮シートと形態学的・免疫組織学的に比較し、臨床応用に最適なシート作製法を検討した。まず、組織学的には、コラーゲンゲル上で作製した角膜上皮シートが犬羊膜上で作製した角膜上皮シートと比較し、より正常角膜に近い層構造を形成した。また、前年度にABCG2およびp63が犬角膜上皮幹細胞マーカー、あるいは犬角膜上皮の増殖能や分化の指標として有用であることを見出したことから、これらのマーカーを用いて免疫組織学的に評価したところ、コラーゲンゲル上角膜上皮シートの基底層でABCG2・p63発現が安定して認められた。医学領域ではp63を高発現する角膜上皮シートによる移植は良好な予後を期待できるとされていることから、現時点で最も有用性が高いものはコラーゲンゲル上角膜上皮シートであると判断し、平成24年度後半から角膜損傷モデルを用いた移植実験を行った。現在のところ、犬2頭を用いて移植実験を行ってるが、損傷部に適した厚みを持つコラーゲンゲル上角膜上皮シートの作製が必要とされ、現在はシートの厚みの調整を検討している。 また、基質を用いずにシートを作製できる温度応答性皿を用いたシート作製は、臨床応用上もっとも簡便に移植ができると期待できることから、培養法を改良して作製方法の検討を継続している。具体的には、これまで3T3細胞をフィーダーとして作製を試みたが、フィーダーフリーでの作製や、犬骨髄間葉系幹細胞をフィーダーとして用いる培養法を試みた。結果、フィーダーフリーではシート状の培養に至らなかったが、間葉系幹細胞を低密度で播種した場合、コロニー形成が良好であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コラーゲンゲル上犬角膜上皮シートは安定して作製できており、移植実験も行うことができている点においては当所の計画通りである。しかし、移植実験においては、シートを安定して角膜損傷部に維持することができず、現在も縫合法やコンタクトレンズ、瞬膜フラップなど、いくつかの方法を検討中である。また、温度応答性培養皿を用いたシート作製ではフィーダー細胞上での培養は可能であったが、組織学的には正常角膜と類似したシートの作製には至っておらず、改良が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では最終年度に臨床応用を遂行できる体制を実現する予定であったが、角膜損傷モデルでの移植実験において移植法を確立させることを第一に研究を推進する。具体的には、作製した角膜上皮シートを安定して損傷部位に生着させる方法として、①コンタクトレンズの併用②瞬膜フラップの併用③両者の併用④角膜への縫合を予定している。また、温度応答性培養シート作製はインサートを用いないため良好なシート作製に至らないと考え、今年度はインサートを用いて犬角膜上皮シートの作製が可能であるかを検討する。さらに、インサートでの培養に用いるフィーダー細胞として、3T3細胞、犬の骨髄間葉系細胞、脂肪由来間葉系細胞を用い、作製したシートの組織学的評価から、最適なフィーダー細胞を選出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は培養および移植実験に係る消耗品費として使用する。新たに購入する備品・設備費はない。
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