研究課題/領域番号 |
23580438
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田中 知己 東京農工大学, 大学院農学研究院, 准教授 (20272643)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 栄養 / 繁殖 / グルコース / 卵巣機能 / 分娩 / ウシ / ヤギ |
研究概要 |
平成23年度は、未経産牛におけるプロピレングリコールによるグルコース利用性の促進効果が卵巣機能に及ぼす影響について検討を加え、国際学術雑誌において公表した。 次に、乳牛において分娩から初回排卵に至る過程における栄養状態の変化を詳細に調査することを目的とし、特に初回排卵と分娩後早期の体重およびBody Condition Score(BCS)の推移に着目して両者の関係を検討した。ホルスタイン種乳牛9頭を供試した。体重およびBCSを分娩後1日~21日の間は隔日、以後は7日毎に測定した。卵巣の変化を調べるため、分娩後7日から分娩後第2回排卵まで隔日で臨床繁殖検査を行い、発情徴候が見られた場合は、排卵するまで連日行った。血中性ホルモン濃度およびグルコース濃度を測定するため、連日あるいは隔日に採血を行った。全ての供試牛における平均1日乳量は、29.0±5.8kgであった。初回排卵が分娩後早期に起こった牛(早期群)と起こらなかった牛(後期群)に区分して解析すると、後期群でより体重の減少が大きくなる傾向がみられた。BCSの損失は、後期群でよりBCSの損失が大きくなる傾向がみられた。血中エストラジオール濃度は、全ての供試牛で分娩後速やかに減少し、早期群では分娩後2週前後に明瞭なピークが観察された。血中グルコース濃度と乳量には負の相関が認められ、グルコース濃度は分娩前から分娩後19日までの期間において、早期群で後期群と比較して有意に低かった。以上より、分娩後の初回排卵は、分娩後早期の体重、BCSの低下および変化率が関係していることが示唆された。 現在ヤギおよび乳牛における短期間の増餌および飼料給与が卵巣機能に及ぼす影響について検討を加えており、解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乳牛において、プロピレングリコールによるグルコース利用性の促進効果が卵巣機能に及ぼす影響に関して、その研究成果を国際学術雑誌(Animal)において公表し、新たに乳牛の分娩後における栄養状態と卵巣機能再開との関係を明らかにした。特に体重やBody Condition Score値そのものというよりもそれらの変化率が重要であることが明らかとなった(第152回日本獣医学会において報告)。一方、ヤギにおける増餌が卵巣機能に及ぼす具体的なメカニズムの解析については、発情周期を回帰するヤギの解析に時間がかかり、サンプリングを開始した段階である。以上のことから、今年度はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
家畜の繁殖率を栄養学的なアプローチにより向上させる新たな飼養管理法について検討を加える。ヤギにおいて、増餌が血中のグルコース、インスリン、性ステロイドホルモンおよび黄体形成ホルモン分泌に及ぼす影響を詳しく調べる。特に本研究において、乳牛における飼料給与が卵巣ホルモン分泌の亢進およびホルモン代謝に影響を与えることが明らかとなったことから、ヤギにおける増餌においても卵巣機能および妊娠に関与する黄体ホルモンや黄体形成ホルモン分泌が変化することが想定されることを考慮して実験を進める。平成23年度に発情周期を回帰するヤギの解析に時間がかかったことから、今年度は当初から解析する雌ヤギの頭数を増やす対応策を講じる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は62,026円の残額が生じた。これは研究費全体に対して5%程度の額であり、平成24年度は当初の予定どおり、この額を加えた額(1,362,026円)を予算とし、分析等に使用する消耗品の購入を行うための物品費(50万円以上の物品を購入する予定はない)、旅費(研究成果の公表および情報収集)、人件費・謝金、その他(論文校正等)、に使用する予定である。
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