研究課題/領域番号 |
23580439
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
酒井 洋樹 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40283288)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 血管肉腫 / 犬 / 増殖因子 / ヌードマウス / 移植 / 細胞株 |
研究概要 |
犬血管肉腫における増殖因子/受容体をターゲットとした新たな治療法の確立を目指し,犬血管肉腫細胞株を樹立し,さらに増殖に関与する増殖因子/受容体を明らかにすることを目的とした。平成23年度の計画としては,第一に,これら7株の犬血管肉腫細胞株(JuA1,JuB2,JuB4,Re11,Re21,Ud2,Ud6)の増殖因子/受容体の発現を検討した。その結果,すべての細胞株で,VEGF-A,bFGF,HGF,IGF-I,PDGF-Bは増殖因子と共に受容体のmRNAも発現していたことから、これらの増殖因子はオートクリン/パラクリン機構で働く可能性が示唆された。次に,これらの増殖因子/受容体経路が増殖にどのように影響するかを組み換え human VEGF-A(rhVEGF-A),rhbFGF,rhHGF,rhIGF-I,rhEGF,rhPDGF-BBを様々な濃度(0,1,10,50,100ng/ml)で培地に添加し,増殖刺激試験を行った。その結果,JuB4では,IGF-Iを除く全ての増殖因子で,容量依存性に増殖促進が認められた。JuA1,Re11,Re21では増殖因子ではいずれも促進されなかった。JuB2,Ud2,Ud6ではいずれの増殖因子でも増殖促進効果を示さなかった。これらの結果から,増殖因子に依存せず,別の機構による増殖機構によって増殖する細胞株があることが分かった。最後に細胞株をヌードマウスに接種すると、JuA1(8/10カ所)、Re21(9/10)では全てのヌドマウスに、JuB2(3/10)、JuB4(2/10)では一部のヌードマウスに腫瘍を形成した。Re12、Ud2、Ud6は腫瘍を形成しなかった。形成された腫瘤は免疫組織化学的に,上記増殖因子/受容体を発現していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画した実験自体はおおよそ予定通り進行した。しかし,樹立細胞株では,増殖因子依存性のものが少ないという,計画段階での予想と違う結果が得られた。一方で,増殖因子に依存せず,増殖するという点から,その異常が細胞内シグナル伝達系にある可能性が考えられ,今後の新たな研究進展の糸口が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
犬の血管肉腫細胞株では,増殖因子非依存型の増殖するものがある点から,受容体自体の恒常的な異常活性化あるいは細胞内シグナル伝達系の恒常的活性化などの解明を目指す。また,培養細胞株のみでなく,臨床摘出材料における犬血管肉腫のVEGFやbFGF以外の増殖因子の発現についてはまだ,明らかでない点が多いので,血管新生に関与するPDGFなどの関与も検討する。また,申請時の計画通り,DNAマイクロアレイを用いて,増殖因子の経路のみならず,どのような分子が変動しているかを網羅的に解析する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初計画通り,増殖因子の経路のみならず,どのような分子が変動しているかを網羅的に解析するために,培養細胞株を用いてDNAマイクロアレイを行う。また,臨床材料における犬血管肉腫のVEGFやbFGF以外の増殖因子の発現についてはまだ明らかでない点が多いことを受けて,臨床材料を用いた免疫染色による増殖因子/受容体の発現解析,また受容体遺伝子の変異等の異常の有無を塩基配列解析にて検討する。
|