研究課題
本研究で得られた犬血管肉腫細胞株と犬の大動脈血管内皮細胞を比較対象として,mRNAの発現比較をcDNAアレイにて行った。その結果,IL-13RAなどのサイトカイン受容体などの変動がみられたが,血管肉腫においては,粘液性糖タンパク質であるMUC-1の発現の上昇がみられた。さらに,MUC-1に対するリアルタイムRT-PCRでも,犬血管肉腫腫瘍細胞株において,その発現上昇が確認された。また,そのぞれの犬血管肉腫腫瘍細胞株から総たんぱく質を抽出し,SDS-PAGE後にウェスタンブロッティングによって,MUC-1タンパク質を確認した。ただし,その分子量は22kDa程度で,一般的なMUC-1に比較して低分子量であり,アイソフォームの可能性が示唆された。犬の血管肉腫組織において,腫瘍細胞にMUC-1の局在がみられたが,その陽性像は細胞質のみならず,核にもみられた。一方,犬の血管腫では,陽性所見は得られなかった。以上より,MUC-1が犬血管肉腫の悪性増殖に関連する可能性が示唆された。MUC-1と肉腫の関連は,動物を含め人においても報告されておらず,比較腫瘍学的にも非常に興味深い結果が得られた。ただし,今回検出されたMUC-1の分子は典型的なものではなく,アイソフォームあるいは,類似分子の可能性があり,血管肉腫の新たな分子マーカーとなる可能性が示唆された。上記研究とは別の視点で,増殖因子のうち,血小板誘導増殖因子の受容体(PDGFRAおよびPDGRFB)の遺伝子変異の有無を,犬の血管腫瘍で検討した。その結果,腫瘍細胞のゲノム,特に細胞膜近傍のリン酸化を受ける領域をコードする遺伝子領域にはPDGFRAおよびPDGRFBの変異はまれであることがわかり,過剰な自己リン酸化の関与は低い可能性が示唆された。
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