研究課題/領域番号 |
23580440
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
角川 博哉 山口大学, 農学部, 准教授 (80370592)
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研究分担者 |
柴田 昌宏 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 近畿中国四国農業研究センター, 主任研究員 (60370631)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ウシ |
研究概要 |
キスペプチンは最近発見された神経ペプチドであり、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)を分泌する神経細胞の活動を刺激し下垂体からの性腺刺激ホルモン(LH)の分泌を活発化する。2010年には非繁殖季節のヒツジに点滴で48時間持続投与すると大部分の個体が排卵し、性周期が再帰する事が海外で報告された。畜産現場で長時間の点滴投与法を繁殖に応用するという事は現実的ではない。そこで、長時間に優れた作用が持続する薬剤を開発し、投与する事で、長時間LH分泌を活発化しウシの繁殖機能を良好にする方法を開発し臨床応用する事が本課題の目的である。 天然型キスペプチンは54個のアミノ酸配列であるが、C末端側10個のみのアミノ酸配列であるキスペプチン10に活性中心が有り、良好な生理作用を有する。しかし現状では、キスペプチン10の血中半減期が短くウシを用いた予備実験では作用が持続しない。そこでキスペプチン10の立体構造を参考にした薬剤を合成し、さらに種々の修飾等を加えて血中半減期を延長し、組織浸透性も向上させる。本年度は、この方針で合成した薬剤について細胞培養系を用いて生理作用を確認しながら、有望な薬剤候補の選抜をした。また得られた結果を基に、さらに修飾等を加えた所、血中半減期が長く、組織浸透性も高いと期待される薬剤候補が得られた。 そこで未経産牛を用いたこの薬剤の投与実験を実施した。投与実験では、カテーテルを用いて連続採血を実施し、連続採血の途中で薬剤候補を投与した。その後に投与前後の血中LH濃度の変化をラジオイムノアッセイで分析し、薬剤候補のLH分泌促進作用を調べた。その結果、当該薬剤候補にはin vivoにおいても優れた作用を有する事が確認された。 分担者は、この薬剤候補を牛に投与をし、弊害が生じない事を確認する作業を開始した。初年度にはバイオプシーにより材料を採取し検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の修飾等を加えて血中半減期を延長し、組織浸透性も向上させる事を目標とする方針で合成した薬剤について細胞培養系を用いて生理作用を確認しながら、有望な薬剤候補の選抜をした。その結果、計画段階でのもくろみ通りに、そして想定していた期間程度で優れた薬剤の候補を得る事ができた。さらに想定していた期間程度で、未経産牛を用いた投与実験を実施する事ができ、得られた結果も、当該薬剤候補にはin vivoにおいても優れた作用を有するという、望ましい結果であった。したがって、初年度に予定していて全工程が予定どおりに進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
雌ウシに定期的に本研究で選抜された薬剤候補を投与し、卵胞発育や排卵後の黄体形成、次発情や排卵に対する効果を調べる。また薬剤候補を反復投与しても抗体が作られない事を確認し、また投与部位へのダメージ、さらに枝肉評価に対する悪影響が無い事を確認する。さらに乳牛や肉牛に投与し、人工授精後の受胎率の改善や、分娩後の牛における性周期再帰に対する促進効果を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
雌ウシを用いた投与試験を展開するために、大量の薬剤候補を合成するために研究費を用いる。また投与した牛における効果を検証するために、繁殖機能をモニタリングするための血中ホルモン濃度の変化等を調べるためにも研究費を用いる。さらに初年度に開発された薬剤候補よりも優れた薬剤の開発に取り組むためにも研究費を用いる。
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