研究課題/領域番号 |
23580441
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
高木 光博 鹿児島大学, 獣医学部, 准教授 (40271746)
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研究分担者 |
宇野 誠一 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (50381140)
音井 威重 山口大学, 獣医学部, 教授 (30311814)
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キーワード | ウシ / ブタ / ゼアラレノン |
研究概要 |
飼養環境下の牛群におけるゼアラレノン(ZEN)浸潤動態に関するデータベースの収集を継続して行うとともに、マイコトキシン(MT)吸着剤の添加効果に関する臨床試験を行った。申請者らが摘発した ZEN 汚染牛群を ZEN 浸潤モデル牛群として、MT吸着剤の添加効果について、これまでに報告のない尿中ZENおよびその代謝物であるα-ゼアラレノール(α-ZOL)とβ-ZOL濃度を指標とした客観的な評価方法の確立をはかるとともに、ZEN汚染牛群より得られた血清サンプルを用いて血清生化学検査、プロジェステロン(P4)および抗ミ ューラー管ホルモン(AMH) 濃度測定を行い、ZEN浸潤が各種代謝パラメーターや繁殖性、特に卵胞発育、排卵および卵巣内小卵胞発育 (antral follicle) に与える影響を調査して、内分泌撹乱物質としてのZENの生体における影響を初めて明らかにする事を目的とした。その結果、吸着剤添加前後での尿中ZEN, α-ZOLおよびβ-ZOL濃度の有意な低下と、添加休止による各濃度の再上昇が確認された。さらに、ZEN汚染牛群において、血清AMH濃度の低下が観察されたことから、ZEN浸潤による卵胞内顆粒膜細胞の生存性に与える影響が強く示唆された。上記以外の他の試験結果からは、通常の飼養管理下にある雌牛群での過剰排卵処理成績は尿中 ZEN 濃度には影響を受けないこと、1乳用牛群における年間を通した尿中 ZEN 濃度には有意な季節変化が存在することなどが明らかとなった。さらに、ブタ体外培養系を用いた ZEN およびその代謝物である α-ZOL のブタ精子への曝露試験を実施し、精子保存用液への ZEN および α-ZOL の長期間暴露試験結果より、精子低代謝状態では有意な影響は見られなかったこと、などが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、ZEN汚染モデル牛群を用いたマイコトキシン吸着剤の添加効果、および当該牛群由来の血清生化学および内分泌検査に関する一連の臨床試験を既に終えており、それらの成果の一部は既に World Mycotoxin Journal に受理されている。また、通常の飼養管理下にある雌牛群での過剰排卵処理成績は尿中 ZEN 濃度の有意な影響が無いこと (Takagi et al., Arch. Anim. Breed., 2013)、1乳用牛群における年間を通した尿中 ZEN 濃度には有意な季節変化が見られること (Takagi et al., Anim. Nutri. Feed Tech., 2013) を報告している。さらに、ブタ体外培養系を用いた ZEN およびその代謝物である α-ZOL への曝露試験を実施し、精子保存用液への ZEN および α-ZOL の長期間暴露試験結果より、精子低代謝状態では有意な影響は見られないことを報告している (Sambuu et al., Anim. Sci. J., 2013)。
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今後の研究の推進方策 |
申請者らのこれまでの研究成果から、飼養環境下の牛群におけるMT浸潤動態のモニタリング法の1つとして、尿中ZEN測定は有用であること、および尿中ZEN濃度を指標としたMT吸着剤添加効果の客観的評価が可能であることが明らかにされている。従って、今後の研究の推進方策としては、さらにモニタリング牛群数を増やして尿中ZENおよびその代謝物濃度に関する飼養環境下におけるデータベースの蓄積を進めるとともに、実際に給与されている粗飼料および配合飼料などとの関連性についても詳細な検討を進める。さらに、卵胞中antral follicle数を反映するパラメーターとして知られる血清中AMH濃度が、ZEN浸潤モデル牛群においてZEN非汚染牛群由来の血清サンプルよりも低い傾向があったことから、ウシにおいてZEN浸潤は卵胞内顆粒膜細胞の生存性、卵胞発育に影響を与える可能性が示唆された。従って、今後は本先行試験結果をさらに検証するために、試験牛群数を増やしてZEN摂取と血清中AMH濃度との関連性を検証し、ウシにおけるZENの内分泌撹乱作用の詳細を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に行ったマイコトキシン吸着剤投与効果に関する研究論文を投稿中であり、受理されることが予想されることから、論文投稿料と別刷り料を支払う必要が有るが、支払い時期が次年度になることが明らかであること。さらに、本新政課題の総括を行うために、研究協力者であるユトレヒト大学獣医学部 Fink-Gremmels教授を訪問する予定であるが、次年度にまたがる日程を組む必要があったために、未使用額が生じた。 上記の理由により、未使用額は論文投稿料および別刷り料金、および国外旅費などに充てる予定である。
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