研究課題
Fusarium属真菌由来マイコトキシンで、エストロジェン類似作用を持つことから家畜に繁殖障害などを引き起こす可能性が示唆されているゼアラレノン(ZEN)に着目し、飼養環境下の牛群における尿中ZEN濃度を指標とした浸潤動態モニタリング法を確立している。これまでに、他群と比較して有意に高い尿中ZEN濃度(500倍以上)を示す1牛群を摘発してその原因究明を行い、給与ワラがその原因であることを明らかにする他、ブタ卵子体外培養系モデルを用いたZEN添加試験より、卵子成熟率において濃度依存的な低下が認められたものの、正常受精率および胚盤胞率においては、各群間に有意な差は認められなかったことから、1000ppb以下レベルでの生体内ZEN曝露は、胚の初期発生段階での影響は少ない可能性を示唆した。本年度は申請者らが摘発した ZEN 汚染牛群を ZEN 浸潤モデル牛群として、MT 吸着剤 (MA) の添加効果に関する臨床試験を行ってその有用性を検証した。その結果、MA添加による尿中ZENとその代謝物濃度の低下が認められ、MA添加による腸管からのZEN吸収阻害作用が初めて確認された。併せて行った血清生化学検査結果では、MA添加による影響は認められず、MA添加の肝および腎機能などに対する影響は無いものと推測された。その他、通常の飼養管理下にある雌牛群での過剰排卵処理成績は尿中 ZEN 濃度の違いによる影響は無いこと、1乳用牛群における年間を通した尿中 ZEN 濃度には有意な季節変化が見られること、などを明らかにした。さらに、ブタ体外培養系を用いた ZEN およびその代謝物である α-Zearalenole (α-ZOL) への曝露試験を実施し、精子保存用液への ZEN および α-ZOL の長期間暴露試験結果より、精子低代謝状態では精子性状への有意な影響は無いことを明らかにした。
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World Mycotoxin Journal
巻: 7 ページ: 367-378