研究課題
犬の臨床の現場においてしばしば問題となるマダニ媒介性原虫性疾患のバベシア症とヘパトゾーン症に着目し、日本全国における宿主である犬と、ベクターであるマダニにおけるこれらの病原体の分布・蔓延状況を調査することによって、今後の予防対策を講じるための基礎的データを得ることを目的として研究を遂行する。日本全国47都道府県の動物病院に来院する犬より採取した血液中の原虫、ならびに血中抗体を検出することで感染状況を確認する。また同時に、犬に寄生しているマダニについても同様に採集し、ベクターとして働いているマダニ体内における原虫の検出も試みる。これらを調べることにより、感染犬および原虫を保有したマダニの地理的分布が明らかになる。調査対象の病原体およびその感染によって引き起こされる疾患は、バベシア症、ヘパトゾーン症、アナプラズマ症、エリキア症、ライム病、犬糸状虫症、バルトネラ症、ヘモプラズマ感染症である。 平成23年度はまず、被検材料の収集と病原体検出、および抗体産生の確認を行う予定としており、日本全国47都道府県のそれぞれに位置する動物病院に来院した犬より採血を行い、全血ならびに血清を分離すると同時に、マダニが寄生している場合にはそれも採取することを依頼した。完全屋内飼育犬は対象外とし、各動物病院においてそれらの犬の居住地域、年齢、性別、既往歴、予防歴、来院理由を記録している。また、マダニが採取された場合には、その種についても記録しており、これらのことは現在も継続して行っている。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度は、日本全国47都道府県の動物病院に来院する犬より採血を行い被検材料を確保するとともに、マダニ寄生例ではマダニを確保し、さらに疫学調査の要となる犬の臨床的データも収集する予定であった。当初は年度の初めから検体の収集依頼を行う予定としていたが、平成23年3月に発生した東日本大震災の影響も考慮し、年度の途中から検体収集依頼を出す結果となった。現在は順調に検体収集が進んでいることから、今後実際の解析に移行できる見込みとなっている。
平成24年度以降は被検材料の収集を継続して行うとともに、実際の解析を行っていく。解析内容はバベシア症、ヘパトゾーン症、アナプラズマ症、エリキア症、ライム病、犬糸状虫症、バルトネラ症、ヘモプラズマ感染症に関する血中病原体由来DNAの検出と抗体の検出となる。またバベシア症については抗原虫薬であるアトバコンへの耐性が問題となるが、本研究ではこの耐性株の検出方法の検討と薬剤耐性株に関する分子生物学的な疫学調査も実施することとしている。
平成23年度においてすでに、検体収集にかかる消耗品は購入し、収集を行う動物病院に送付済みである。前述のように平成23年度は検体収集の依頼のみとなり、具体的な解析は平成24年度に行うこととなったため、残金が7,492円発生している。したがって、平成24年度以降は、前年度の繰り越し分を含め、実際の解析に用いるDNAポリメラーゼ、シークエンス反応試薬、血液検査試薬等の薬品や、それにともなう実験器具といった消耗品が必要となるため研究費は主にこれにあてる。また平成24年度には部分的ながらも解析結果が得られる予定であるため、研究成果の国内外における積極的な公表のための費用が必要となる。これらの費用を国内、および国外旅費として計上している。さらに積極的に学術雑誌への論文投稿のためには、外国語論文の校閲と研究成果投稿のための費用も計上している。
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J Vet Med Sci
巻: 73 ページ: 1381-1384