研究課題
犬の臨床の現場においてしばしば問題となるマダニ媒介性原虫性疾患のバベシア症とヘパトゾーン症に着目し、日本全国における宿主である犬と、ベクターであるマダニにおけるこれらの病原体の分布・蔓延状況を調査することによって、今後の予防対策を講じるための基礎的データを得ることを目的として研究を遂行した。日本全国47都道府県の動物病院に来院する犬より採取した血液中の原虫を検出することで感染状況を確認し、これらを調べることによって感染犬および原虫の地理的分布が明らかにした。バベシア症に関してはこれまで得られていた知見と同様に、大阪、山口、徳島、香川、愛媛、長崎、熊本、大分の府県でバベシア(Babesia gibsoni)感染犬が確認された。さらに今回の調査では、秋田県でも陽性例が認められたが、分子生物学的解析により、この例に感染していたのは犬を宿主とするB.gibsoniではなく、シカ等を宿主とするB.odocoileiに近縁のバベシアであることが示唆された。過去に東北地方のマダニから同バベシアが分離されたことはあるが、犬から検出されたことはないことから、注目すべき知見であると思われた。またヘパトゾーン症に関する分布域の報告はあまりないが、今回の調査により犬に感染するHepatozoon canisは岩手、茨城、石川、福井、静岡、滋賀、和歌山、島根、広島、山口、香川、熊本、長崎の各県で検出され、東北、関東、北陸、中国、四国、九州地方に広く分布していることが明らかとなった。今回の一連の研究により得られた結果については、現在、論文執筆中であり、近日中に投稿できる見込みである。
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