本研究では、犬の癌ワクチン開発を目標に、腫瘍特異的抗原由来ペプチドを作成し、安全性が高い生体吸収性の新規のナノ粒子アジュバントと共に犬に投与した。その結果、抗体価の上昇がみられた一方で、細胞性免疫の誘導は確認できなかった。担癌動物への投与(1例)では、副作用はみられなかったが、臨床的な効果は確認できなかった。有用な癌ワクチンにするためには改良が必要であるが、癌ワクチン開発について基礎的な情報を得ることができた。また研究の過程で免疫療法の標的となるTRP-2分子の遺伝子単離や多くの腫瘍抗原の発現系の構築に成功した。さらに犬で多発する肥満細胞腫表面でのKIT分子の発現を解析する方法を確立した。
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