研究課題/領域番号 |
23580450
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
齋藤 弥代子 麻布大学, 獣医学部, 講師 (80367242)
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研究分担者 |
神志那 弘明 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50506847)
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キーワード | 変性性脊髄症 / ALS / L-カルニチン / レボカルニチン / ウェルシュ・コーギー |
研究概要 |
臨床検査と遺伝子検査を実施し40頭のウェルシュ・コーギー(WC)を変性性脊髄症(DM)と診断し研究に組み入れた。飼主の同意が得られた6頭においてレボカルニチン投与を行い(オープントライアル)、昨年度確立した評価項目のデータを定期的に収集した。11頭にて死亡後に病理組織学的検索を実施した。 人ALS に用いられる評価パラメーターの、DMにおける経時的変化を明らかにすることができた。実施項目の中で、筋周囲径、肢の脂肪比率、DMscoreはいずれも症状進行に伴って変化したため、これら3項目はDMの症状進行度合いの客観的な指標として有用であることが示された。特に、我々の考案したDMscoreは、歩様観察という簡便な方法であるにもかかわらず経時的に変化する臨床徴候を明確に数値化することができた。LC投与群と非投与群の2群間において各種臨床徴候の発現時期に有意差は認められなかったが、DMscoreを用いた比較では、LC投与群のscore値の変化が明らかに遅い傾向を示した。LC投与によると考えられる有害事象はみられなかった。死亡症例における病理学的診断と臨床的診断とは一致していた。病理検体を用いたDM と人ALSとの比較検討は現在進行中である。今年度の研究より、我々の開発した評価法はDMにおける神経機能の変化を示すパラメーターとして有用であり、今後LCの有効性の検証を目的とした二重盲検試験を実施する価値があることが示された。 遺伝子検査は、他施設から得られた検体を含め今年度は383頭の犬で実施した。DM の臨床徴候を呈さない122頭のWCにおいて69.7%という高い割合で変異SOD1アレルが認められ、本邦における高い変異率が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね交付申請書通りに進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した研究実施計画に則り 1. 検体の採取とDMのルールアウトのための臨床検査の実施 (齋藤・神志那)、2. SOD 1遺伝子型の解析 (大和・神志那)、3. 評価項目の測定とLCの投与 (齋藤・神志那)、さらに研究に組み入れた犬が死亡した場合 は 4. 病理検査(加藤・齋藤)を予定通り実施し、症例数の増加を測る。 レボカルニチンオープントライアル終了後はその結果を詳細に解析し、二重盲検試験実施を検討する。二重盲検試験を行う場合は、来年度からの実施を目指す。MUNEの測定においては、刺激微増幅を細かく設定できる既存の刺激装置が存在しなかったため、来年度はF波という刺激増幅幅の影響が少ない方法を用いて測定が可能かどうかを検証する予定である。得られた組織を用いて、ALSとの相同性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
応募内容ファイルと前述した今後の研究の推進方策に則り、症例におけるDM 診断のための費用の一部、カルニチン血中濃度測定費用、各種評価項目測定のための費用、電気生理学的検査法確立のための費用、データ保存解析用の機器や消耗品、病理検査のための試薬や器具等に使用予定である。
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